COVID-19関連追加(20211119日)

不稔感染(abortive infection: 感染様式が最後まで進行せず,途中でウイルス複製がストップする: @自然免疫系によりウイルス複製が中断; Aウイルス複製に必要な因子の欠如のため完全複製に至らない.

【不稔性(abortive)血清陰性SARS-CoV-2において,既存のポリメラーゼ特異的T細胞が拡大する】

Swadling, L., Diniz, M.O., Schmidt, N.M. et al. Pre-existing polymerase-specific T cells expand in abortive seronegative SARS-CoV-2. Nature (2021). Published Nov 10, 2021.

https://doi.org/10.1038/s41586-021-04186-8.

Abstract

SARS-CoV-2に曝露した人は、必ずしもPCRや抗体が陽性になるとは限らず,セロコンバージョン前に不顕性感染が解消される人がいる可能性が示唆されている.T細胞は,SARS-CoV-2やその他のコロナウイルス感染症の迅速なクリアランスに寄与している1)-3).我々は,SARS-CoV-24-11に対する交差防御を持つ可能性がある既存の記憶T細胞応答が4)-11)in vivoにおいてウイルスの迅速な制御や不稔感染を支持するために拡大するという仮説を立てた.我々は,PCR,抗体結合,中和応答では,繰り返し陰性のままであった医療従事者(seronegative HCWSN-HCW)を集中的に監視し,早期に転写された複製転写複合体(RTC: replication transcription complex12)13)に対する反応を含むSARS-CoV-2反応性T細胞を測定した.SN-HCWは,未曝露のパンデミック前コホートと比較して,より強力で多種類の記憶T細胞を持ち,検出可能な感染後(マッチした同時コホート)に見られた構造タンパク質を主体とした反応(structural protein-dominated responses)よりも、RTCに対する反応がより頻繁に見られた最も強いRTC特異的T細胞を持つSN-HCWでは,SARS-CoV-2の早期の自然免疫系シグネチャーであるIFI27 14)が増加しており,不稔感染が示唆されたRTC内のRNAポリメラーゼは,ヒト季節性コロナウイルス(HCoV)とSARS-CoV-2clades間(across)で高い配列保存性を示す最大の領域であったRNAポリメラーゼは,パンデミック前コホートやSN-HCWT細胞から優先的に標的とされた(検査した領域の中で)SN-HCWにおいて,HCoV variantsを交差認識するRTCエピトープ特異的T細胞が確認された.豊富な既存のRNAポリメラーゼ特異的T細胞は,顕在化した(overtSARS-CoV-2感染と比べると,推定された不稔感染後の記憶応答において優先的に蓄積するために,拡大した.これらのデータは,流行および新興コロナウイルス科に対するワクチンの標的としてのRTC特異的T細胞を強調する.

 

 

SARS-CoV-2 T-cells in seronegative HCW:

曝露リスクと人口統計学的要因をマッチさせて,集中的に監視した感染あるいはSN-HCWT細胞応答性を比較した(COVIDsortium, Extended Data Table 1, Fig. 1a).また,ヒトにおけるSARS-CoV-2循環前の英国ロンドンまたはシンガポールで採取された健常成人を対照コホートとした(pre-pandemic cohort; Fig. 1a).SN-HCWは,毎週の診断検査(baseline-wk16, SARS-CoV-2 PCR, nasopharyngeal swab; anti-Spike-1 IgG and anti-nucleoprotein [NP] IgG/IgM seroassays 28), Fig. 1b-d)が陰性であることで定義された.検査で確認された感染では,16週(wk16)時点のnAb力価には幅があることが過去に報告されており,我々はSN-HCWにおけるnAbを調べた.nAbが閾値を上回っていた2人のHCWはさらなる解析から除外された; 残りのSN-HCWpseudotype assayでは陰性であり(Fig. 1e),あるサブセットは3つの時点でauthentic virus中和も陰性であることが確認された(Extended Data Fig. 1a).SN-HCWは登録までにPCR陰性になっていた可能性があるが,PCR陽性後の非セロコンバーターは稀であり(3つの血清アッセイすべて陰性でPCR陽性HCW2.6% 16)),登録までに抗体応答が減弱した可能性は低いさらに,SN-HCWは検出可能なSARS-CoV-2スパイク特異的記憶B細胞を欠いていた(この記憶B細胞は,nAbの減弱後も持続することがわかっている29))(Extended Data Fig. 1b, below detection threshold.このように、SN-HCWは厳重に監視された,検査で確認された感染に抵抗性のあるHCWコホートである.

我々は,SARS-CoV-2特異的記憶T細胞を,RTCの構造タンパク質とあまり研究されていない非構造タンパク質をカバーする重複するペプチドで偏りなく刺激するELISpotで定量した(Fig.1f).報告されているように,高感度アッセイ5)-7)9)17)18)(たとえば,今回使用した400,000PBMC/well IFNγ-ELISpot 8)16))を用いた場合,パンデミック前サンプルにはSARS-CoV-2反応性T細胞がいくつか検出された; しかし,その多重特異性は16週時点における検査で確認された感染群に比べて著しく低かった(Fig. 1g-h; 過去に報告された16)16週時点での構造反応).対照的に,SN-HCWSARS-CoV-2特異的T細胞は,16週時点において,感染したHCWと同等の広がりを持ち,パンデミック前サンプルよりも多重特異性が有意に高かった(Fig. 1g-hSN-HCWは,パンデミック前と比較して、より多くのタンパク質プールを標的とし,反応の累積規模が約5倍大きく,全体的な強さは16週時点での感染コホートと同等であった(Fig. 1i-j

パンデミック前サンプルからのT細胞は、NPをいずれも半数(both halves)(NP1 & NP2 subpools)を標的としない傾向があったが,一方SN-HCWおよび検査で確認された感染群の約50%が標的としており,これは,多重特異性反応の単純な代理測定として機能しているという我々の以前の提案8)を裏付けている(Extended Data Fig. 1c-e).以上より我々は,繰り返し行ったPCRおよび抗体が陰性のHCWでは,パンデミック前コホートと比較して,SARS-CoV-2特異的T細胞の大きさと幅が大きいことがわかった

 

RTC-specific T-cells and IFI27 in SN-HCW:

我々は次に,SN-HCW vs 検査で確認された感染があるHCWで,T細胞記憶が異なるかどうかを調べた.インフルエンザAflu),Epstein-Barrウイルス(EBV),サイトメガロウイルス(CMV)(FEC)を認識する抗ウイルスT細胞は,3つのコホート間で同等であった(Extended Data Fig. 2a).しかし,SARS-CoV-2構造タンパク質 vs RTCタンパク質に対するT細胞の相対的な免疫優位性は,群間で異なっていた.検査で確認された感染群では,RTCNSP7, NSP12, NSP13)よりも構造タンパク質(Spike, Membrane, NP, ORF3a)に対する反応が多かった(Fig. 2a-b.構造タンパク質に対する記憶T細胞は,ウイルス量と正の相関を示す傾向があったが,一方RTCに対する反応はこのような相関を示さなかった(Extended Data Fig. 2b).対照的に,SN-HCWは構造領域とRTC領域の両方を標的とし,RTC特異的T細胞の数は感染群あるいはパンデミック前群よりも有意に多かった(Fig.2a, Extended Data Fig. 2c-dパンデミック前サンプルでは,構造領域に対するRTC領域の比率はSN-HCWのそれと有意差はなく(Fig. 2b),SN-HCWで拡大しているT細胞プールに既存の反応が影響を与えている可能性が指摘された.さらに,PCRで感染が確認されたが,16週時点でnAbが検出されなかったHCWの少数グループ(10%)の中には,結合抗体を持たない者もいた; 興味深いことに,このサブグループも同様にRTC反応性T細胞が豊富であった(Extended Data Fig. 2e-f).以上のことから,軽度の感染後は,活動的な感染時に多く産生される構造タンパク質が優位なT細胞標的である一方で,SN-HCWにおけるT細胞はRTCを優先的に標的とすることが示唆された

16週時点でのSN-HCWにおけるELISpot反応のT細胞の同一性を確認するため,我々はRTCペプチドでそれらを拡大し,そしてCD4+およびCD8+SARS-CoV-2特異的T細胞が分化し(CTV希釈),IFNγの産生が検出された(Extended Data Fig. 3a; Extended Data Table 2).これらのT細胞の拡大後の頻度(post-expansion frequencies)は,同じドナーにおける対照flu/EBV/CMV特異的反応よりも低い傾向にあるが,ex vivoでの頻度の違いに比例しており,同等の増殖可能性が示唆される(Extended Data Fig. 3b).SN-HCWにおけるin vitroで拡大したRTC特異的T細胞も高機能であり,併せて複数のサイトカインを産生した(Extended Data Fig. 3c-d).SN-HCWから拡大したSARS-CoV-2特異的T細胞のほとんどはCD4+であったが,大多数の人にはCD8+T細胞も検出された(Extended Data Fig. 3e).

我々のデータは,HCWにおけるSARS-CoV-2感染はあるスペクトラム,つまりSN-HCWの中にはPCRあるいは抗体のセロコンバージョンでは検出できない不顕性感染の結果,T細胞が拡大しているものがあるという可能性を提起した.この仮説を検証するために,我々は血液中のインターフェロン誘導性転写産物であるIFI27を測定した(我々は最近,IFI27は,PCR陽性時点またはその1週間前にSARS-CoV-2感染を検出することを示した[特異度0.95, 感度0.84]14)).曝露後のRTC特異的T細胞応答が最も強かったSN-HCW25%のうち(Extended Data Fig. 4a),40%(つまりSN-HCW群の10%)は,検査で確認された感染群よりもレベルは低い傾向にあるものの,募集時にすでにIFI27レベルが未曝露のパンデミック前サンプルコホートで設定された閾値を超えていた(Fig. 2c不稔感染の頻度をさらに推定するために,我々は,99個の未選択のSN-HCWベースラインサンプルのより大きいコホートを検査したところ,同程度の割合(9.1%)で,パンデミック前の閾値を超えるIFI27誘導が見られた(Fig. 2cIFI27シグナルがパンデミック前の閾値を超えてピークに達したのは,0週〜5週にかけてRTC特異的T細胞が強かった人の93.3%であり,RTC特異的T細胞が弱いあるいは検出できない人はいなかった(Fig. 2cIFI27レベルは累積的に上昇し,英国のロックダウン後35週時点でピークに達した(Fig. 2d, その頃にはすべての第一波の検査で確認された感染が発生していた, Fig. 1b.対照的に,RTC特異的反応が弱い,あるいは存在しないSN-HCWでは,IFI2705週にかけて変化せず,その結果、IFI27の傾きと分散は小さくなった(Fig. 2d, Extended Data Fig. 4b-c).ピークIFI27レベルは16週時点でNSP7 T細胞と相関しており,後者はNSP12やその他のRTC特異的反応と構造反応よりも強く相関していた.IFI27T細胞特異性も,この小規模なコホートでは,年齢,性別,その他の人口統計学的因子(曝露の種類など)とは相関しなかった(Extended Data Fig. 4d, Extended Data Table 1).

以上をまとめると,英国におけるパンデミック第一波の開始時の伝播率の高い時期に,PCRあるいは抗体による感染の確認が欠如していたにもかかわらず,曝露後のSARS-CoV-2特異的T細胞が最も強かった人に,ウイルス曝露を示す低レベルの全身性インターフェロン応答が選択的に検出されたIFI27は偶発的な感染時に誘導され,ウイルス量と相関するという我々の過去のデータ14)から推定すると,これはRTC特異的T細胞応答が強いSN-HCWにおける低レベル感染(low-level infection)と一致する.

Targeting of conserved RNA-polymerase:

PCRあるいはセロコンバージョンで検出されない一過性/不稔感染は,ウイルス播種量が少ないことや,自然免疫応答や獲得免疫応答がより効率が高いことに起因すると想像できる.既存の記憶T細胞が,SARS-CoV-2複製の早期ウイルス産物を交差認識して急速に拡大するため,後者はもっともらしい.軽度のSARS-CoV-2感染では,ウイルスが検出される前からT細胞の増殖とT細胞受容体クローン拡大が観察されており17)30),ウイルス特異的T細胞の拡大は,mRNAワクチン接種後の抗体誘導に先行する2)31)SN-HCW群では,SARS-CoV-2特異的T細胞,特にRTCに対するT細胞が豊富であることがわかったので,我々はこれらのT細胞の一部が既存の交差反応性応答の拡大である可能性を検討した.

SARS-CoV-2を交差認識する既存のT細胞の源としては,近縁のヒト流行性感冒コロナウイルス(α-HCoV 229E, NL63, β-HCoV HKU1, OC43)の過去の感染である可能性が高い.我々は、bioinformaticallyに,SARS-CoV-2由来の15merペプチドの可能性があるすべての配列と,精査したHCOVの配列との相同性を調べた(Supplementary Table 1).SARS-CoV-2のライフサイクルの第一段階で発現するRTCタンパク質は13)HCOVと高い相同性を持つ15mer配列を持っていた(Fig. 3a32)33).特に,NSP7NSP12NSP13由来の15merは,構造タンパク質由来の15merと比較して,4種のHCOVとの平均配列相同性がそれぞれ6.3%29.9%31.0%と高かった(いずれもp< 0.001, Fig. 3b).これらのタンパク質の中で最も大きいNSP12は,ヒトに感染するコロナウイルス科の中で最も相同性の高い領域を示していた.さらに我々は,全世界で流通しているSARS-CoV-2配列(611,893個の配列のうちの13,785個の代表的なサブサンプル, GISAID, 2021727; Extended Data Fig. 5a)を通して,Nei’s genetic diversity indexと,任意のヌクレオチドにおける独立した変異イベント(homoplasies)の最小数の推定値を用いて,多様性を評価した.RTCタンパク質NSP12およびNSP13は,いずれのmetricsで,SARS-CoV-2 clades間で最も保存されているタンパク質の一つであり(Fig.3c, Extended Data Fig. 5b-d),多くの構造タンパク質よりも有意に保存されていた(Extended Data Table 3).

重要なことに,高度に保存されたRNAポリメラーゼ(NSP12)は,パンデミック前サンプルで検査された領域の中で,T細胞が最もよく標的とした領域であり,反応の平均的な大きさと頻度が最も高かった(Fig. 3d).注目すべきは,地理的に異なるシンガポールのパンデミック前サンプル群でも,同じようにNSP12を優先的に標的とすることが観察されたことである(Fig. 3d).これまでに報告されているように5)7)17)34),既存のT細胞は,HCoV間で保存性の低い領域を含め,検査したすべてのウイルス抗原を認識する可能性があった.これらの領域に対する反応は,SN-HCWでさらに豊富になっており(enriched)((Fig. 3d-e; Mann-Whitney p<0.0001 for all except ORF3a p=0.0006, NSP13 p=0.0003),曝露された血清陰性者のT細胞記憶には,既存およびde novo応答の多くの源が寄与していることが示唆される.コホート間の人口統計学的な交絡因子の可能性(Extended Data Table 1)にもかかわらず,パンデミック前サンプルと同様に,SN-HCWNSP12を優先的に標的とした(Fig. 3e).したがって,既存のT細胞が最もよく標的とするウイルスタンパク質は,コロナウイルス科の間で最も保存されている領域でもあり,HCoVへの曝露が交差反応性T細胞の源の1つである可能性が高いことが示唆された.

さらに,季節性HCoVへの先行感染による交差反応の可能性を探るため,我々はSN-HCWにおけるRTC特異的CD4+およびCD8+ T細胞エピトープを新規および既報で6)8)18)35),マッピングしたところ,HCoVとの高い配列保存性が明らかになった(Extended Data Table 4; Extended Data Fig.6a-b).NSP7では,HLA-A*02:01拘束性エピトープに対する交差反応性が確認された.T細胞のサブセットは,ex vivoSARS-CoV-2およびHKU1配列ペプチドを負荷したMHCクラスIペンタマー(co-stained with MHC class I pentamers loaded with SARS-CoV-2 and HKU1 sequence peptide ex vivo)と共染色し,いずれかのペプチドで10日間拡張した後,SARS-CoV-2ペプチド負荷ペンタマー(SARS-CoV-2 peptide-loaded pentamer)と結合した(Extended Data Fig. 6c).検査したHLA-A*02:01+ SN-HCW3/5からのT細胞は,他の季節性HCoVSARS-CoV-2に比べて,HKU1配列に対して強い反応を示した(Extended Data Fig. 6d-e).このことから,HKU1に先行感染したことで,NSP7反応が活性化され,効率は低下するものの,SARS-CoV-2配列を交差認識することができることが示唆された.HLA-B*35+ SN-HCWはまた,NSP12エピトープの季節性HCoV variant配列を様々に交差認識した(Extended Data Fig. 6f).

SN-HCWで交差反応性のあるT細胞が拡大した別の説明としては,ロンドンでSARS-CoV-2感染の第一波が発生した際に,季節性コロナウイルスに感染した可能性が考えられる.予想通り,すべてのHCWは,4つの流行性HCoVに対する検出可能な抗スパイクIgGを持っていた.そして過去に報告されたように36)β-コロナウイルスOC43に対するスパイク特異的抗体は,PCRで検出可能な感染とSARS-CoV-2特異的セロコンバージョンを持つ人ではブーストされていた(Extended Data Fig. 7).しかし,強いRTC特異的T細胞を持ち,IFI27が上昇したHCWでは,RTC特異的反応が弱い,あるいは欠如しているHCWと比べても,流行性HCoV力価に差はなかったので(Extended Data Fig. 7),SN-HCWで検出されたSARS-CoV-2反応性T細胞は,HCoV感染自体が原因である可能性は低いと考えられる.

以上をまとめると,ウイルスのライフサイクルの第一段階で発現するポリメラーゼのようなRTC領域は,HCoVの間で高度に保存されており,パンデミック前およびSN-HCWサンプルにおいてはT細胞によって優先的に標的とされる感染を中止できた(不稔感染, to abort infection)ドナーからのT細胞の一部は,SARS-CoV-2HCoVの配列をそれぞれのRTCエピトープで交差認識することができたことから,交差反応性T細胞の源の一つとして,HCoVへの先行感染が示唆された

Polymerase T-cells in abortive infection:

既存の交差反応性および/または急速に生成されたde novo RTC特異的T細胞がin vivoで拡大するかどうかを調べるために,我々はSARS-CoV-2曝露の前後におけるペアPBMCサンプルを得た.COVID-19パンデミック(20182019年冬)前にサンプリングされた医学生と検査室スタッフ(Contact Cohort, n= 23)は,IgGセロコンバージョン+/PCR陽性の有無にかかわらず,感染症例との濃厚接触後に再サンプリングされた(Contact Cohort, Extended Data Table 5).曝露前後/感染のPBMCを並行して解析したところ,濃厚接触した血清陰性群では,構造反応を超えてRTC反応が拡大していた(Fig. 4a一方,血清学的に感染が確認された群では,構造性SARS-CoV-2反応性T細胞の予想されたin vivoにおける拡大が見られ,RTC特異的T細胞の有意な拡大は見られなかった(Fig. 4a; Extended Data Fig. 8aSARS-CoV-2への曝露後も血清陰性のままだった4/5人では,既存のNSP12反応がin vivoで拡大し,結果として,NSP12反応が有意に増加したが,対照Flu/EBV/CMV反応は増加しなかった(Extended Data Fig. 8b-c).残りの血清陰性の濃厚接触者4/5人は,曝露後に新たに検出され,de novoと推定される低レベル反応を示した(Extended Data Fig. 8c).

我々は次に,SN-HCWグループでは、募集時から少量のPBMCを採取することができたSN-HCWに戻り,16週時点での最も強いRTC反応を示した人のベースラインのT細胞を対象に解析した.NSP12特異的T細胞は,曝露後に最も強いNSP12反応を示したSN-HCW群の79%において,ベースラインですでに検出されていた(Fig. 4bNSP12反応は,募集から16週時点までにin vivoにおいて平均8.4倍に拡大した(Flu/EBV/CMV反応には対応する変化はなかった)(Fig. 4c, Extended Data Fig. 8d我々は,既存のRTC特異的T細胞が16週時点で拡大していることを,サブプール(Extended Data Fig. 8e-f)および個々のペプチド(Fig. 4c, Extended Data Fig. 8g)のレベルで確認した.加えて,多くのT細胞が曝露後に新たに検出され(Extended Data Fig. 8g),これはde novoプライミングまたは以前のアッセイの検出限界未満であった反応の拡大を反映している(ex vivo ELISpotでは検出できなかった反応の拡大例, Extended Data Fig. 8h).新たに検出された,あるいは拡大/縮小したNSP12特異的T細胞を持つすべてのHCWは,曝露後にNP1NP2の両方に反応するT細胞を持っていたが(Extended Data Fig. 8i),NSP12に変化がなかった2/5人のみがこれらの特異性を持っており,彼らは同じレベルのSARS-CoV-2に曝露されていなかったかもしれないことを示唆している.募集時と16週の追跡調査までのNSP12における倍数変化は,総SARS-CoV-2反応と相関しており,曝露後にT細胞免疫が拡大している血清陰性者を特定する上でのNSP12の有用性が裏付けられた(Extended Data Fig. 8j).

最後に我々は,SN-HCWでは,16週時点で,検査で感染が確認されたHCWと比較して,RTC特異的反応が優先的に豊富であるかどうかを調べた.驚くべきことに,RNAポリメラーゼNSP12とそのコファクター(cofactorNSP7は,検出可能な感染が成立していない血清陰性者において,明白な感染が成立している者と比較して,より高い規模(higher magnitude)のT細胞応答を誘導する唯一のタンパク質であった(Fig. 4dSN-HCWにおけるT細胞は,パンデミック前あるいは血清陽性コホートに比べて,より多くのNSP12領域(約40のオーバーラップする15mersのサブプール, Fig. 1g)を標的とした(Extended Data Fig. 8k).SN-HCWでは,NSP12や他のRTCプールのいくつかの領域を標的とするT細胞が,検査で感染が確認された場合に比べて,豊富に認められた(Fig. 4d, lower panel.検査で確認された感染者の16週時点での記憶応答におけるNSP12特異的T細胞の頻度低下が,SARS-CoV-2に遭遇した時のレパートリーを反映しているかどうかを調べるために,我々はPCR陽性になる前,またはセロコンバージョンの>4週間前に採取したサブセットからベースラインのPBMCを入手した.NSP12特異的T細胞は,SN-HCWに比べて,検査で確認された感染へ進展した人ではベースライン時にすでに有意に低く(Fig. 4e, Extended Data Fig. 8l-m),PCR検出可能な感染やセロコンバージョンからの保護に役割を果たしている可能性が示唆された

 

 

Fig. 1: SARS-CoV-2-specific T-cells in seronegative HCW. a, Design of HCW and pre-pandemic cohorts. b, Cycle threshold values for E gene PCR in SN-HCW and laboratory-confirmed infection (undetectable at 40 cycles assigned 41). c, Anti-Spike S1 and d, anti-NP antibody titres in SN-HCW (baseline to wk16; n=58; dotted lines at assay positivity cut-off and at average peak [AvPos] response in laboratory-confirmed infection). e, Pseudovirus neutralisation at wk16. Crossed circles excluded from SN-HCW group (IC50 >50). f, SARS-CoV-2 proteome highlighting RTC and structural regions assayed for T-cell responses (peptide subpools identified by numbered boxes) and the number of overlapping 15mer peptides (or mapped epitope peptides [MEP] for spike) in brackets below. g, Viral proteins recognised by individuals coloured by specificity and h, number of viral proteins targeted by group. i, Magnitude of T-cell response coloured by viral protein and j, cumulative magnitude of T-cell response by group. Red bar, geomean. g-j, IFNγ-ELISpot. e,h, Red bar, median. h,j, Kruskal-Wallis with Dunn’s correction. M, membrane; NP, nucleoprotein; RTC, replication-transcription complex; SFC, spot forming cells. b-e,g-j, COVIDsortium HCW cohort.

 

 

Fig. 2: RTC-specific T-cell and IFI27 signature in SN-HCW. a, Magnitude of T-cell response to structural regions and RTC. b, Ratio of T-cell response to RTC versus structural regions. Percentage of cohort with a ratio above 1 (RTC>Structural) shown below. c, IFI27 transcript signal by RT-PCR in unexposed pre-pandemic samples (n=59), baseline samples in HCW that remained PCRand seronegative throughout follow-up (n=99), SN-HCW with weak (n=5, <50 SFC/106  PBMC, Extended Data Fig. 4a) or strong (n=15, >50 SFC/106  PBMC) RTC-specific T-cells (baseline [BL] and peak signal [wk0-5]), and HCW at the time of PCR positivity (PCR+). d, longitudinal IFI27 signal in SN-HCW with weak or strong RTC-specific T-cell responses (n as in c). c,d, 2 standard deviations (SD) either side of the pre-pandemic cohort mean highlighted by grey area and percentage with raised IFI27 above mean+2SD indicated below. a-b, IFNγ-ELISpot. a-b, Red bar, geomean. c-d, Red bar, median. a-d, Kruskal-Wallis ANOVA with Dunn’s correction. c, Mann-Whitney paired t-test. a-b, wk16. a-d, COVIDsortium HCW cohort.

 

 

Fig. 3: Cross-reactive T-cells targeting conserved RNA-polymerase. a, Heatmap, sequence homology of SARS-CoV-2-derived peptide sequences to HCoV sequences. Columns, 15mer SARS-CoV-2-derived peptides. Rows, HCoV genome records. Cells are coloured by the level of homology of the 15mer to a particular HCoV proteome. Heatmap cells with no fill indicate sequence homology <40% was observed. b, Average sequence homology of 15mers covering SARS-CoV-2 proteins, or regions (pink, structural [S, M, NP, ORF3a]; black, RTC [NSP7, NSP12, NSP13]), to HCoV sequences. Viral proteins not assayed for T-cell responses are shown in grey. c, Nucleotide diversity along the SARS-CoV-2 genome estimated with Nei’s genetic diversity index, across each viral protein for all SARS-CoV-2 clades (subsampling Extended Data Fig. 5a). d, Magnitude of T-cell responses to individual SARS-CoV-2 proteins in unexposed pre-pandemic samples and e, SN-HCW at wk16. Frequency of responders shown as doughnuts above. d-e, IFNγ-ELISpot, bar at geomean. nd, not done. d,e Kruskal-Wallis with Dunn’s correction. d-e, COVIDsortium HCW cohort.

 

 

Fig. 4: In vivo expansion of polymerase-specific T-cells in abortive infection. a, Magnitude of T-cell response in seronegative close contacts of cases (green), or in seropositive infected individuals (orange) to RTC, structural proteins, summed total, and Flu, EBV, CMV (FEC) peptide pool (grey seronegative/seropositive combined), before and after exposure/infection. Bar, mean + SEM. b, Change in magnitude of NSP12 T-cell response between recruitment and post-exposure in SN-HCW (sub-group with top 19 RTC responses at wk16, Extended Data Fig. 4a). Expanded, >2-fold change. c, Magnitude of paired preand post-exposure T-cell responses to individual 9-15mer peptides (individual responses Extended Data Fig. 8g) from RTC or control FEC pool in SN-HCW (wk16-26, 11 responses from 9 SN-HCW). d, Magnitude of T-cell response to individual SARS-CoV-2 proteins (upper panel) and to subpools (~40 overlapping peptides; lower panel) within RTC at wk16 in laboratory-confirmed infected HCW or SN-HCW. e, Pre-existing NSP12-specific T-cell responses in baseline samples from SN-HCW and laboratory-confirmed infection group (PCR+ after baseline or seroconversion at least 4 weeks post-recruitment). Doughnut plot above shows frequency. a-e, IFNγ-ELISpot. c, d-e Red line/bars, geomean. a,c Wilcoxon test. d,e, Mann-Whitney test and Fisher’s exact test. a, Contact cohort, Extended Data Table 5. b-e, COVIDsortium HCW cohort, Extended Data Table 1).

 

 

 

 

Discussion

我々は,不稔性,血清陰性SARS-CoV-2感染にとってのT細胞および自然免疫系転写産物の証拠を示した.SN-HCWと追加のコホートから得られた縦断的なサンプルによると,RTC(特にポリメラーゼ)特異的T細胞は,曝露前に豊富となっており(were enriched),in vivoで拡大し、SARS-CoV-2感染を成立しなかった人では,顕在化した感染者に比べて優先的に蓄積された.

セロコンバージョンを起こしていないHCWにおけるT細胞が,早期に発現した非構造SARS-CoV-2タンパク質へ様々に偏っていることは,HIVSIVHBVでは非構造T細胞の誘導を促進することが報告されているように26)37)38),非常に低いウイルス播種に職業的に繰り返し曝露していることを反映しているかもしれない(may).このような反復的な曝露は,一部のSN-HCWにおいて観察された自然シグナルIFI27の長期的な誘導やde novo T細胞の発生と一致するだろう.

しかし,我々は,季節性HCoVSARS-CoV-2の間のエピトープ variantsを交差認識できる反応を有する既存のT細胞の拡大を立証した.HCoV間で高度に保存されたエピトープに向けられた交差反応性SARS-CoV-2特異的CD8+T細胞については,既存のT細胞はORF1abのような変異の許容範囲が狭い必須ウイルスタンパク質を標的とすることが多く,現在十分に説明されている6)18)32).豊富なSARS-CoV-2特異的CD4+T細胞は,抗ウイルスサイトカインおよびケモカイン産生のような抗体に依存しないメカニズムでSN-HCWの防御に貢献しているかもしれない.HCWは一般人に比べてHCoV反応性T細胞の頻度が高く19),最近のHCoV感染は重症COVID-19感染のリスク低下と関連しており39),おそらく交差反応性中和抗体に一部起因している可能性が高い40)41); しかし,既存のT細胞の関与も指摘されている15)42).軽度の感染では抗体が検出される前に30),そしてmRNAワクチンの効果と同時に,T細胞が早期に誘導され,既存の交差反応性記憶T細胞の役割が支持されている2)31)

ナイーブT細胞よりも頻度が高く,抗原を交差認識すると迅速に再活性化することで平衡を保っている(poise),既存のRTC特異的T細胞は,早期の制御に有利であると考えられ,古典的感染に比べて不稔感染後にそれらが豊富になることが説明される.しかし,ウイルス播種と交差反応性T細胞の相対的な寄与については,ヒトでの曝露実験や動物モデルを用いて,さらに詳しく解析する必要がある.この研究の注意点は,末梢性免疫(peripheral immunity)しか解析していないことである; 我々の血清陰性コホートでは,粘膜に限定した抗体(mucosal-sequestered antibodies43)が役割を果たしているのは確からしい.また,RTCに偏ったT細胞応答が低グレード感染のバイオマーカーとして生成され,自然免疫が不稔感染の制御を媒介する可能性も残っている.RIG-Iのインターフェロンに依存しない誘導が,sgRNAの生成前にウイルスのライフサイクルを制限することで,SARS-CoV-2感染を中止させる(abort)と考えられてきた13); この場合,ウイルスのライフサイクルの第一段階で細胞質に放出されたORF1abからエピトープが提示されやすくなり12),一方でpgRNAからの構造タンパク質の産生が阻害される.このことから,SARS-CoV-2感染細胞の一部は,構造タンパク質や成熟したビリオン広く産生されることなく,ORF1ab反応性T細胞に認識され,除去される可能性が考えられる.

我々は,セロコンバージョンを伴わない自然免疫および細胞性免疫の誘導を説明し,SARS-CoV-2再感染のリスクとワクチンの免疫原性を特に評価すべき人(individuals)のサブセットを強調した.我々が調査したHCWは,Wuhan Hu-1に曝露され、PPEによる部分的な防御を受けていた; より感染性が高いVOCsに曝露した場合,あるいはワクチン誘発性免疫が存在する場合に,不稔感染が起こるかどうかはまだ明らかではない.しかし,セロコンバージョンを伴わないクリアランスは,T細胞が特に効果的なワクチンの標的になるかもしれないことを示唆している.コロナウイルス間の交差防御は,マウスにおける配列の相同性に比例しており44),今回研究された高度に保存されたNSP12領域や,あまり研究されていないNSP3/14/16領域は,異種免疫(heterologous immunity)の最有力候補である.今回のデータは,ドナーの一部に既存のT細胞が存在し,それがin vivoで拡大し,SARS-CoV-2や他のコロナウイルス科の高度に保存された領域を標的にできることを強調している.このようなT細胞のブーストによって,流行中のウイルスや新興ウイルスに対して持続的な汎コロナウイルス科の反応性が得られる可能性があり,スパイク特異的抗体の補助として,次世代のワクチンにT細胞を含めて評価することの議論が必要である.

 

References

省略.