COVID-19関連追加(20211121日)アスピリンのRECOVERY試験

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20201219

COVID-19入院患者に対するアスピリンの投与(RECOVERY:

無作為化比較非盲検プラットフォーム試験】

RECOVERY Collaborative Group. Aspirin in patients admitted to hospital with COVID-19 (RECOVERY): a randomised, controlled, open-label, platform trial. Lancet. Nov 17, 2021.

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)01825-0/fulltext.

Background

アスピリンは,その抗血栓性に基づいて,COVID-19の治療として提案されている.我々は,COVID-19入院患者に対するアスピリンの有効性と安全性を評価することを目的とした.

Methods

Summary:

この無作為化対照非盲検プラットフォーム試験では,COVID-19入院患者を対象に,いくつかの可能性のある治療を通常治療と比較した.この試験は,英国の177病院インドネシアの2病院ネパールの2病院で実施された.適格かつ同意を得た成人が,通常の標準治療に加えて,退院まで11150mgのアスピリンを投与する群と,通常の標準治療のみを行う群に,1:1で無作為に割り付けられた.ウェブベースの単純(層別なし)無作為化法を用いて,割り付けはマスクされた.主要アウトカムは28日死亡率であった.すべての解析はintention to treatで行われた.本試験は,ISRCTN50189673)およびClinicalTrials.govNCT04381936)に登録されている.

 

Study design and participants:

The Randomised Evaluation of COVID-19 TherapyRECOVERY)試験は,COVID-19入院患者を対象に,潜在的な治療法の効果を評価するための,医師主導の個別無作為化対照非盲検プラットフォーム試験である.試験デザインの詳細および評価された他の治療法(ロピナビル-リトナビル,ヒドロキシクロロキン,デキサメタゾン,アジスロマイシン,トシリズマブ,回復期血漿、コルヒチンなど)の結果については,これまでに発表されている8)9)10)11)12)13)14).アスピリンの比較試験は,英国の167病院,インドネシアの2病院,ネパールの2病院で実施され(appendix pp5–26),英国ではNational Institute for Health Research Clinical Research Networkの支援を受けている.本試験は,試験のスポンサーであるオックスフォード大学(英国・オックスフォード)のNuffield Department of Population Healthによってコーディネートされた.本試験は,International Conference on Harmonisation Good Clinical Practiceガイドラインの原則に従って行われ、英国医薬品・ヘルスケア製品規制庁およびケンブリッジ・イースト研究倫理委員会の承認を得た(参照番号20/EE/0101).

入院患者は,臨床的にSARS-CoV-2感染が疑われるか,または検査で確認され,主治医の意見において,試験に参加すると患者が相当なリスクを負う可能性がある病歴がない場合に,試験の対象となった18歳未満はアスピリンへの無作為割り付けの適格ではなかった.また,アスピリンに対して過敏症であることがわかっている患者,最近大出血を起こしたことがある患者,現在アスピリンや他の抗血小板治療を受けている患者除外した.すべての患者から書面によるインフォームド・コンセントを得た.また,もし患者の体調が悪い場合,あるいは同意を得られない場合は法定代理人から同意を得た.

Procedures:

アスピリン群に割り当てられた患者は,退院まで150mg/を経口(または経鼻胃管)または経直腸から投与された過体重の患者を含むすべての参加者において,血小板のシクロオキシゲナーゼ-1活性を十分に阻害できることが保証されるアスピリン150mg/日が用量として選択された15)

参加者が退院した時,死亡した時,または無作為後28日のいずれか早い時点で,single online follow-upは完了した(appendix pp35–41).我々は,割り付けられた試験治療へのアドヒアランス,他のCOVID-19治療,入院期間,呼吸器または腎臓のサポート,およびバイタルステータス(死因を含む)に関する情報を記録した.さらに,英国では,我々は,バイタルステータス(死亡日と死因),退院,呼吸器サポートまたは腎代替療法に関する情報を含む,ルーチンの医療および登録データを得た.

Outcomes:

アウトカムは無作為化後28で評価され,さらに6ヶ月で解析が行われた.主要アウトカムは全死亡率であった.副次アウトカムは,退院までの時間,および無作為化時に侵襲的機械式換気を行っていなかった患者が侵襲的機械式換気(ECMOを含む)に移行あるいは死亡であった.事前規定した補助的な臨床アウトカムは,非侵襲的呼吸サポートの使用,侵襲的機械式換気の離脱までの時間(28日以内に離脱し,28日まで生存したと定義),腎透析または血液濾過の使用,原因別死亡率,大出血イベント(頭蓋内出血,輸血,内視鏡検査,手術,血管作動薬を必要とする出血と定義),血栓イベント(急性肺塞栓症,深部静脈血栓症,虚血性脳卒中,心筋梗塞,全身性動脈塞栓症と定義),主要不整脈であった.重篤な有害反応の疑いがある情報は,規制当局の要求に応じて迅速に収集された.

Statistical analysis:

我々は,アスピリンに無作為に割り付けられた患者と,通常治療に無作為に割り付けられた患者(しかし,アスピリンが入手可能で治療に適している患者)との間でintention-to-treat比較を行った.主要アウトカムである28日死亡率については,生存曲線が等しいという帰無仮説の検定(すなわち,log-rank検定)と平均死亡率比のone-step estimateの算出に,観察されたlog rankから期待値を引いた統計量とその分散(the observed log rank minus the expected statistic and its variance)を用いた.我々は,Kaplan-Meier生存曲線を作成し,28日間の累積死亡率を表示した.退院までの時間と侵襲的機械式換気の離脱についても同じ方法で解析し,入院中に死亡した患者は29日目で打ち切った.退院までの時間の中央値は,Kaplan-Meier推定値から求めた.事前規定した複合副次アウトカムである侵襲的機械式換気への移行または28日以内の死亡(無作為化時に侵襲的機械式換気を受けていなかった患者),および補助的な臨床アウトカムである換気(人工呼吸),血液透析または血液濾過の使用については,正確な日付が入手できなかったため,代わりにリスク比を推定した.

主要アウトカムについては,事前規定したサブグループ解析(年齢,性別,民族,呼吸器サポートの量,発症からの日数,コルチコステロイドの使用など,無作為化時の特徴によって定義)を行った.我々はSARS-COV-2PCR検査が陽性であった患者に対する主要アウトカムの解析に限定して感度解析を行った.さらに我々は,無作為化時の静脈血栓予防治療による主要および副次アウトカムの事後探索解析を行った.サブグループ分類内で観察された効果は,事前規定された解析計画(appendix P99)に従い,異質性または傾向に関するχ2検定を用いて比較された.

率およびリスク比の推定値を95%CIとともに示した.すべてのp値は両側で,多重検定の調整を行わずに示している.このデータベースは,オックスフォード大学Nuffield Department of Population Health(英国,オックスフォード)の研究チームが,各研究施設からデータを収集し,解析された.

プロトコルに記載されているように,COVID-19パンデミック開始時に試験を計画していた際には,適切なサンプルサイズを見積もることができなかった(appendix p33).試験の進行に伴い,比較試験の結果を知らないメンバーで構成された試験運営委員会は,両群の間における28日死亡率における臨床的に意義のある比例的減少12.5%を検出するためには,両側有意水準1%で少なくとも90%の検出力が得られるように十分な患者を登録すべきであると定めた.結果として,2021321日,運営委員会は結果を伏せた上で,十分な患者が集まったとしてアスピリン比較試験の募集を終了した.

Results

Summary:

退院までアスピリン150mg/日を内服.2020111日〜2021321日の間に,RECOVERY試験に登録された22,560人の患者のうち,14,892人(66%)がアスピリンに無作為に割り付けられる適格者であった.7351人の患者をアスピリン投与に,7541人の患者を通常治療のみに1:1に無作為に割り付けた.全体では,アスピリン群7351人のうち1222人(17%),通常治療群7541人のうち1299人(17%)が28日以内に死亡した(率比0.96, 95%CI 0.89-1.04; p= 0.35).事前規定したすべてのサブグループの患者で一貫した結果が得られた.アスピリン群では,入院期間がわずかに短く(中央値8, IQR 5->28, vs 9, IQR 5->28),28日以内に生存して退院した割合が高かった(75% vs 74%; 率比1.06, 95%CI 1.02-1.10; p= 0.0062).ベースライン時に侵襲的機械式換気を行っていなかった患者では,侵襲的機械式換気または死亡という複合エンドポイントを満たす割合に有意な差はなかった(21% vs 22%; リスク比0.96, 95%CI 0.90-1.03; p= 0.23).アスピリンの使用は,血栓性イベントの減少(4.6% vs 5.3%; absolute reduction 0·6%, SE 0·4%)と,大出血イベントの増加(1.6% vs 1.0%, absolute increase 0·6%, SE 0·2%)と関連していた.

COVID-19入院患者において,アスピリンは28日死亡率,侵襲的機械式換気への移行または死亡リスク減少とは関連しなかったが,28日以内に生存して退院する率のわずかな増加(small increase)と関連していた

Main:

2020111日〜2021321日の間に,RECOVERY試験に登録された患者22,560人のうち,14,892人(66%)がアスピリンに無作為に割り付けられる資格を有していた(すなわちその時点で,院内でアスピリンが入手可能であり,主治医が患者にアスピリンの既知適応疾患あるいは禁忌がないとの見解を示していた; Figure 1).患者のベースライン特性をTable 1に示す.7351人の患者が通常治療とアスピリン併用に,7541人の患者が通常治療のみに無作為に割り付けられた.この比較試験の参加者の平均年齢は59.2歳(SD 14.2)で,発症から時間の中央値は9IQR 6-12; appendix p45)だった無作為化時点で,5035人(34%)が高用量の低分子ヘパリン(LMWH)による血栓予防療法を受けており,8878人(60%)が標準用量のLMWHを受けており,そして979人(7%)が血栓予防療法を受けていなかった(appendix p54

 

 

Figure 1: Trial profile.

Aspirin unavailable and aspirin unsuitable groups are not mutually exclusive. *Number recruited overall during the period that adult participants could be recruited into the aspirin comparison. †Includes 379 (5%) of 7351 patients in the aspirin group and 407 (5%) of 7541 patients in the usual care group allocated to tocilizumab.

 

 

Table 1: Baseline characteristics.

Data are n (%), mean (SD), or median (IQR).

* Includes 58 pregnant women. Defined as requiring ongoing specialist care.

Defined as estimated glomerular filtration rate lower than 30 mL/min per 1·73 m2.

 

 

追跡調査票は,アスピリン群の7351人のうち7290人(99%),通常治療群の7541人のうち7457人(99%)に完了した.追跡調査票が記入された参加者のうち,アスピリン群に割り付けられた6587人(90%)が少なくとも1回のアスピリン投与を受け,通常治療群に割り付けられた210人(3%)が少なくとも1回のアスピリン投与を受けた(Figure 1; appendix p46).

アスピリン投与に割り当てられた6587人のうち,少なくとも1回のアスピリン投与を受けた5040人(77%)は、無作為化後のほとんどの日数(無作為化から退院までの日数または無作為化後28日のいずれか早い方の日数の90%以上)でアスピリンを投与された.COVID-19 の他の治療の使用率は,アスピリン群と通常治療群でほぼ同じであり,約90%にコルチコステロイド,約1/4にレムデシビル,1/8にトシリズマブが投与された(appendix p46

無作為に割り付けられた患者の99%について,主要および副次アウトカムデータが判明した.我々は,主要アウトカムである28日死亡率を達成した患者の割合は,両群において有意な差は認められなかった(アスピリン群7351人中1222[17%] vs 通常治療群7541人中1299[17%]; 率比0.96, 95%CI 0.89-1.04; p= 0.35; Figure 2, Table 2).この割合は,事前規定したすべてのサブグループで同様であった(Figure 3).SARS-CoV-2検査結果が陽性であった14,892人のうち14,467人(97%)に限定した探索的解析でも,結果はほぼ同じであった(率比0.96, 95%CI 0.89-1.04; p= 0.31).

Figure 2: Effect of allocation to aspirin on 28 day mortality.

Table 2: Effect of allocation to aspirin on key study outcomes.

RR=rate ratio for the outcomes of 28-day mortality and hospital discharge, and rate ratio for the outcome of receipt of invasive mechanical ventilation or death (and its subcomponents).

* Analyses exclude those on invasive mechanical ventilation at randomisation.

 

 

Figure 3: Effect of allocation to aspirin on 28 day mortality by baseline characteristics.

アスピリン群は,通常治療群と比較して,生存退院までの時間の中央値を1日短縮し,28日以内に生存退院する割合が増加した(Table 2).ベースライン時に侵襲的機械式換気を行っていなかった患者のうち,アスピリン群では,事前規定した複合副次アウトカムである侵襲的機械式換気または死亡に移行した患者の数は,通常治療群と同様であった(Table 2).通常治療に対して,生存退院するまでの時間,侵襲的機械式換気または死亡におけるアスピリン投与の効果が,事前規定した患者のサブグループ間で異なるという証拠は認めなかった(appendix pp 52–53).事後探索的解析では,無作為化時のLMWHの使用によって,通常治療に対して,主要および副次アウトカムにおけるアスピリン投与の効果が異なるという証拠は認めなかった(appendix p54).

事前規定した補助的な臨床アウトカムである原因別死亡率(appendix p47),換気(人工呼吸)の使用,侵襲的機械式換気の離脱,腎透析または血液濾過の使用には,有意な差は認められなかった(Table 2).アスピリンの使用で予想されたように,アスピリン群では通常治療群に比べて血栓性イベントの発生率が低く(4.6% vs 5.3%, 絶対差−0.6%, SE 0.4%),大出血イベントの発生率が高かった(1.6% vs 1.0%, 絶対差0.6%, SE 0.2%)(appendix p 48

 

 

新規の不整脈の発生率は両群で同様であった(appendix p49).

 

 

アスピリンに関連すると思われる重篤な有害事象の報告は18件あり,そのすべてが出血性イベントによるものであった(appendix p50

 

Discussion

14,000人を超える患者と2,000人を超える死亡者を含むこの大規模な無作為化試験では,アスピリンは,死亡率の低下や,ベースライン時に侵襲的機械式換気を行っていなかった患者において,侵襲的機械式換気または死亡という複合エンドポイントに移行するリスクの低下とは関連しなかったしかし,アスピリンは28日以内に生存退院できる率をわずかに増加させることに関連していた.これらの結果は,年齢,性別,民族,無作為化前の症状の期間,無作為化時の呼吸サポートの量,コルチコステロイドの使用など,事前規定したサブグループで一貫していた.

予想通り,アスピリン投与は大出血のリスクを増加させ,血栓塞栓合併症のリスクを減少させた; つまり,アスピリン投与を受けた患者1,000人につき大出血を起こす患者が約6人増加し,血栓塞栓合併症を起こす患者が約6人減少することになる.本研究で報告された血栓塞栓イベントの発生率は,過去の報告と比較して低かった(通常治療群で5.3%1)2)この結果は,参加者が血栓塞栓イベントについて体系的にスクリーニングされていなかったこと,試験対象者にコルチコステロイドが広く使用されていて血栓炎症刺激(thromboinflammatory simulus)が減少していること,あるいは心血管疾患の既往のためにすでにアスピリンを投与されている患者が除外されていることに関連しているかもしれない.それに伴って出血リスクも増加する可能性があるが16),血栓リスクがより高い集団では,アスピリンがより意義のある有益性を持っていたかもしれない.

COVID-19における血栓塞栓症の病態は多因子性である可能性が高い.重症COVID-19では凝固障害が一般的であり,炎症状態,好中球細胞外トラップ(NETs: neutrophil extracellular traps),予後不良と関連している2)17)18)19)20)21).その結果として,血小板の活性化が進み(ウイルスとの直接的な相互作用による可能性もある),局所的に炎症を増幅させ,免疫血栓症(immunothorombosis)を誘発する22)23).さらに,SARS-CoV-2感染は,アンジオテンシン変換酵素2受容体を介して直接侵入する可能性があり,複数の臓器で血管内皮の炎症,機能不全,破綻を引き起こす24)25)26).その結果,内皮傷害と組織因子の曝露が肺循環やその他の血管床での血栓症を促進し,微小血管症と肺胞毛細血管閉塞がCOVID-19に見られるびまん性肺胞傷害および低酸素症に寄与する25)27)

さらに剖検調査では,COVID-19患者ではインフルエンザ患者の9倍の頻度で肺微小血栓が認められている25)

COVID-19における抗血栓療法に関する多数の無作為化比較試験には,治療量のヘパリン,直接作用型経口抗凝固剤,抗血小板剤,セリンプロテアーゼ阻害剤,血栓溶解剤などが登録されている28).重症患者を対象としたINSPIRATION試験,REMAP-CAP試験,ACTIV-4a試験,ATTAC試験では,治療的抗凝固療法による臨床アウトカムの有益性は報告されなかった29)30).同様に,COALIZAO-ACTION試験の暫定結果では31)D-dimersが上昇した入院患者の死亡率,退院の成功,酸素の必要性という複合エンドポイントにおいて,治療的抗凝固療法(ヘパリンまたはリバーロキサバン)の有益性は示されなかった.しかし,REMAP-CAPACTIV-4aATTACの研究者らは,非重症COVID-19患者において,血栓予防用量のヘパリンと比較して,治療用量のヘパリンは,最初の21日間に臓器補助を受けずに退院生存した参加者の割合が4.6%95%CI 0.7-8.1)の絶対的増加を認めたと報告している32)

COVID-19におけるアスピリンの使用に関する他の公表された無作為化試験データはないが,REMAP-CAPACTIV-4aATTACの報告では,一部の患者では抗血栓療法が重要であることが示唆されている32)今回の試験でアスピリンの有用性が認められなかったのは,LMWHによる抗血栓療法やコルチコステロイド治療による血栓炎症刺激の軽減が高い確率で行われていたために,抗血小板療法が臨床的に意義のある追加有益性をもたらさなかったのかもしれない(could.あるいは,血栓症や肺胞傷害を引き起こす他の非血小板経路が,臨床アウトカムのより重要な決定因子であった可能性もある.

COVID-19患者における抗血栓療法の有益性は,治療開始のタイミングにも依存する可能性があり,特に入院時に既に血栓が形成されていた場合には注意が必要である33).予防的または治療的抗凝固療法を行っているCOVID-19患者において,血栓塞栓および微小血栓イベントがよく見られる34)INSPIRATIONREMAP-CAPACTIV-4aATTACの重症患者コホートでは,明らかに有益性が認められなかったことから,これらの患者は抗凝固療法による有益性が得られる時期を過ぎてしまったかもしれないことが示唆される29)30).本研究では,症状の持続期間,ベースラインの重症度,背景にある血栓予防レジメンに基づく異質性(heterogeneity)の証拠は得られなかったが,現在進行中の外来患者(ambulatory populations)を対象としたアスピリンの臨床試験や,より強力な抗血小板阻害および線溶療法を検討している試験では,さらなる知見が得られるにちがいない.

この試験の強みは,無作為化されていること,サンプルサイズが大きいこと,適格性の基準が広いこと,患者の99%が主要アウトカムについて追跡調査されていることなどである.しかし,この試験にはいくつかの限界もある.放射線学的または生理学的なアウトカムに関する詳細な情報は収集されていない.この無作為化試験はオープンラベル(すなわち,参加者と地域の病院スタッフが割り当てられた治療法を知っている)であるが,主要および副次アウトカムは明確であり,ルーチンの医療記録との関連付けにより偏ることなく確認された.しかし,血栓塞栓および出血イベントの報告が,治療法の割り当てを知っていることで影響を受けている可能性は否定できない.にもかかわらず,これらのイベントに対するアスピリンの比例効果(proportional effects)は,心血管疾患の既往がある人を対象とした過去のアスピリンの大規模臨床試験6)で報告されたものと非常によく似ていた.

RECOVERY試験は,COVID-19入院患者のみを対象とした試験であるため,他の患者群で使用されるアスピリンの安全性と有効性に関するエビデンスを提供することはできない.COVID-19非入院患者におけるアスピリンの安全性と有効性を明らかにするためのさらなる研究が必要であり,現在進行中である.

Conclusions

この大規模無作為化試験の結果は,COVID-19入院患者において,標準的血栓予防や治療的抗凝固療法としてアスピリンを追加することを支持するものではない

 

 

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傾向スコアマッチングによる解析】

Chow JH, et al. Association of prehospital antiplatelet therapy with survival in patients hospitalized with COVID-19: A propensity score-matched analysis. Journal of Thrombosis and HaemostasisVolume 19, Issue 11 p. 2814-2824. Aug 29, 2021.

https://doi.org/10.1111/jth.15517.

Abstract

Purpose

コロナウイルス感染症2019COVID-19)は,血液凝固性亢進と血栓症リスクの上昇を伴う.病院前(prehospital)の抗血小板療法が院内死亡率に与える影響は不明である.

Methods

本研究は,米国の90の医療システムから,50歳以上の患者34,675人を対象とした観察的コホート研究である.患者は,20202月〜20209月の間に,検査で確認されたCOVID-19入院患者である.全患者について,人口統計と併存疾患を用いて,病院前抗血小板療法に対する傾向(propensity)を算出した.傾向スコアに基づいて患者をマッチングし,院内死亡率を抗血小板療法群と非抗血小板療法群で比較した.

Results

傾向スコアをマッチさせた17,347人のコホートは,抗血小板療法群が6781人,非抗血小板療法群が10,566人であった.院内死亡率は,病院前抗血小板療法を受けた患者で有意に低く(18.9% vs 21.5%, p< 0.001),その結果,死亡率における絶対的減少(absolute reduction)は2.6%であった(HR: 0.81, 95%CI: 0.76-0.87, p< 0.005平均して,1人の院内死亡を防ぐためには39人の患者を治療する必要があった(NNT: 39.抗血小板療法群では,肺塞栓症の発生率が有意に低く(2.2% vs 3.0%, p= 0.002,そして鼻出血(epistaxis)の発生率が高かった(0.9% vs 0.4%, p< 0.001その他の出血性および血栓性合併症の発生率には差がなかった

 

 

Figure 3: Kaplan-Meier estimates of cumulative survival. Patients are stratified by antiplatelet therapy. Patients discharged within the study period are right-censored. The 95% CIs of estimated cumulative survival for each group shown in the shaded areas. Antiplatelet use was associated with a decreased hazard for in-hospital mortality (adjusted HR = 0.81; 95% CI, 0.76–0.87, p < .005)

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Conclusions

COVID-19患者に病院前抗血小板療法を行ったこれまでで最大の観察研究では,院内死亡率の有意な減少との関連が認められたCOVID-19における抗血小板療法の最終的な有用性を明らかにするためには,ベースラインの併存疾患が多い多様な患者集団を対象とした無作為化比較試験が必要である.