新型コロナウイルス感染症まとめver3-520211123日)

SARS-CoV-2感染あるいはワクチン接種による免疫持続性】

Milne G, et al. Does infection with or vaccination against SARS-CoV-2 lead to lasting immunity? PERSONAL VIEW. Lancet Respiratory Medicine. Oct 21, 2021.

https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(21)00407-0/fulltext

Summary

多くの国では,前例のないCOVID-19関連の規制からの出口戦略として,SARS-CoV-2ワクチンの導入を進めている.しかし,この戦略が成功するかどうかは,自然感染とワクチン接種の両方から得られる防御免疫の持続期間に大きく依存している.SARS-CoV-2感染は,持続期間は年齢や疾患の重症度によって異なるが,幅広いウイルスエピトープに対する獲得免疫応答を引き起こす.症例研究や大規模な観察研究から得られた最新の知見によると,他の一般的な呼吸器ウイルスに関する研究と同様に,防御免疫応答は一次感染から約512ヶ月間持続し,強固な一次液性応答が十分に得られない場合は再感染する可能性が高いことが示唆される.液性および細胞媒介性免疫記憶のマーカーは,何ヶ月も持続する可能性があり,再感染時の重症疾患を軽減するのに役立つかもしれない.ブレイクスルー感染の証拠を含む新たなデータは,新たなVOCsに対してワクチン有効性が著しく低下する可能性を示唆しており,したがって,集団レベルの防御免疫を維持するために第2世代ワクチンを開発する必要がある.とはいえ,抗原ドリフト,新たな変異ウイルスへの選択圧,集団の人流により,さらなるアウトブレイクが発生する可能性があるため,他の介入も必要となるだろう.

 

Introduction:

201912月に出現して以来,SARS-CoV-2は急性および慢性疾患という大きな負担の原因であり続けており,世界中の医療システムに多大な圧力をかけている.伝播の連鎖を断ち切り,パンデミックに伴うmorbidityや死亡率の急増を遅らせるため,各国政府は,ソーシャルディスタンス,マスク着用,検査,接触者追跡,渡航制限,隔離など,非医薬品的介入を行ってきた.しかし,これらの対策の代償として,社会的・経済的な被害は他に類を見ないものとなっている1)

検査能力の向上に加え,新型ワクチンの有効性2)3)4)と世界中の集団における展開が発表され,2020年の公衆衛生の見通しが不安視されていたことと比較すると,大きな希望が見えてくる.それにもかかわらず,SARS-CoV-2の新たな遺伝子変異に関するデータ5)や,再感染の可能性に関する証拠は6)-19),一次感染後の免疫防御の概念を脅かすものであり,ワクチン接種後も同様に、あるいはそれ以上に懸念される.もし,循環しているSARS-CoV-2株の遺伝子構造の変化によって,免疫の持続性が阻害されるとすれば,非医薬品的介入の厳格さを緩和する上で,重要な意味を持つことになる.

この潜在的な脅威の大きさを理解するために,このpersonal viewでは,我々は一般的な呼吸器ウイルスと過去のパンデミックのヒトコロナウイルスに関する研究を評価し,SARS-CoV-2感染に関する新しい免疫学的データの全体像を検証する.我々は,自然感染とワクチン接種の両方に対応するSARS-CoV-2に対する細胞性および液性免疫の蓄積してきた知見に焦点を当て,防御免疫の持続性という観点から,入手可能な証拠が何を意味するのかについての見解を示す.また,SARS-CoV-2の新たな変異の出現や,ヒトへの再感染の証拠が増えていることについて懸念される点を述べ,現在の理解不足のギャップに取り組むための研究の優先順位を明らかにする.

SARS-CoV-2 immunity in context:

SARS-CoV-2は,一本鎖陽方向鎖RNAウイルス(positive-sense RNA viruses)のCoronavirinae亜科に属しており,4つの属がある: AlphacoronavirusBetacoronavirusGammacoronavirusDeltacoronavirusである.Coronavirinaeの中には,ヒトにおける軽度の上気道感染症の原因となるウイルスが含まれている: HcoV-229EおよびHcoV-NL63(アルファコロナウイルス),HcoV-OC43およびHcoV-HKU1(ベータコロナウイルス)である20).ベータコロナウイルスには,コウモリやラクダからヒトに感染する,パンデミックウイルスであるSARS-CoVMERS-CoVなどが含まれる21).これらの様々なヒトコロナウイルスの疫学には違いがあるが,感染に対する宿主の免疫応答には関連性がある.例えば,SARS-CoV-2は,感染に対する自然免疫応答を逃避するための様々なメカニズムを進化させており(figure 1),宿主の認識メカニズムやウイルスの免疫逃避経路は,過去のパンデミックコロナウイルスのものと類似している22)-26)

Figure 1: Molecular mechanisms of innate immune activation after SARS-CoV-2 infection.

SARS-CoV-2は,Sタンパク質の表面ユニットS1と宿主のACE2およびTMPRSS2との相互作用を介して宿主細胞に侵入し,続いてエンドサイトーシスを経てウイルスゲノムを細胞質に放出する22)ウイルスの複製中に存在する中間二本鎖RNAフォーム(intermediate double-stranded RNA formsは,MDA5LGP2NOD1などの様々な細胞質の宿主PRRsによってPAMPsとして認識される23)これらのPRRsは,MAVSを介して多数の下流成分を活性化し,IKKεTBK1の活性化を引き起こすこれらのキナーゼはIRF3をリン酸化し,IRF3は二量体化して核に移動し,さまざまな転写因子(NF-κBIRF3IRF5)を活性化して,I型インターフェロンをエンコードする遺伝子の転写を誘導する24)-26).また,宿主細胞には,I型インターフェロンと結合する細胞外ドメインを持つI型インターフェロン受容体が存在し,JAK-STAT経路を介した分子カスケードにより,STAT1-STAT2-IRF9ヘテロ二量体ISREに結合し,ISGsが刺激されることで,様々な抗ウイルス作用を発揮する23)SARS-CoV-2は,様々な分子メカニズムによってI型インターフェロンの抗ウイルス作用を逃避することができる.例えば,nsp13TBK1のリン酸化を阻害し,IRF3の活性化を阻害する.また,様々なnspsORFsは,STAT1STAT2のリン酸化を阻害し,インターフェロン刺激遺伝子因子(すなわち,IRF9に結合したSTAT1-STAT2ヘテロ二量体)の形成を阻害しているORF6はまた,インポーチン(importin)と結合し,STAT1IRF3のいずれの核内移行を阻害し,ISGsの発現とインターフェロンの産生をダウンレギュレートする24)

ACE2= angiotensin-converting enzyme 2. IKKε= inhibitor of κ-B kinase ε. IRF= interferon regulatory factor. ISGs= interferon-stimulated genes. ISRE= interferon-stimulated regulatory element. JAK= Janus kinase. LGP2= laboratory of genetics and physiology 2. MAVS= mitochondrial antiviral-signalling protein. MDA5= melanoma differentiation-associated protein 5. NF-κB= nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells. NOD1= nucleotide-binding oligomerisation domain containing 1. nsp= non-structural protein. ORF= open reading frame. P= phosphorylation. PAMPs= pathogen-associated molecular patterns. PRRs= pattern recognition receptors. S= spike. STAT= signal transducer and activator of transcription. TBK1= TANK-binding kinase 1. TMPRSS2= transmembrane protease serine 2.

 

 

 

 

補足: (生物物理 612, 102-1062021. https://doi.org/10.2142/biophys.61.102

SARS-CoV-2のゲノムサイズは約3万塩基 であり,11の遺伝子(Open Reading Frame, ORF)がコードされているそれぞれの遺伝子は1種類の非構造タンパク質(orf1ab4種類の構造タンパク質 (スパイク(S)タンパク質,エンベロープ(E),メ ンブレン(M),ヌクレオカプシドタンパク質(N)) および6種類の付属タンパク質(ORF3aORF6 ORF7aORF7bORF8 およびORF10をコードしている(図1左)orf1abは翻訳後,自身がコードするパパイン様プロテアーゼ(nsp3, PL-pro)およびメインプロテアーゼ (M-pro)によって切断され,16種類のタンパク質(nsp1からnsp16)に分かれる.

 

 

SARS-CoVから回復した患者を対象とした研究によると,循環IgG応答は感染後23年間検出可能であり27)28),中和抗体は感染後6ヶ月を超えて29)30),さらには12年後まで31)確認されている.同様に,MERS-CoVから回復した患者では,感染後18ヶ月まで中和抗体が検出されている32).少数のコホートではあるが,疾患重症度と抗体寿命(antibody longevity)の間にも相関関係が見られた: 無症候性患者は血清陰性であったが,一方重症から回復した患者は感染後34ヶ月抗体が検出された33)MERS-CoVの動物モデルでは,中和抗体が産生されないと,ウイルスの再曝露時に炎症が増強され,臨床アウトカムが悪化することが示されており,これらのことから中和抗体がコロナウイルスによる再感染の防止に重要な役割を果たしていることが示唆される34)

季節性コロナウイルス,RSウイルス,インフルエンザウイルスなどの他の呼吸器ウイルスでは,感染は中和抗体産生を誘導する傾向があり,これは再感染に対して一時的な防御となる35).自然感染の研究では,防御免疫の減弱によって,季節性コロナウイルスに12ヶ月以内に再感染することが示されている(ただし,これらの研究では考慮されていない変異株が,この短命な免疫の一因となっている可能性がある)36)37)RSウイルスに自然感染した成人を対象とした研究では,73%15人中11人)が8ヶ月以内に再感染した38).一方,乳児を対象とした研究では,36%125人中45人)が出生から24ヶ月以内に再感染し,再感染のリスクは過去の感染時の中和抗体価と負の相関関係にあった39)

Humoral immunity in natural SARS-CoV-2 infection:

中和抗体の存在は,様々な病原体に対する有効な免疫の最も良い相関関係の一つと考えられている40).しかし,SARS-CoV-2に対する長期的な免疫を理解する上での主要な課題は,防御の免疫的な相関についてのコンセンサスが得られていないことと,現在,ヒト再曝露研究が少ないことである.20212月,英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンで,1830歳の被験者90人を対象とした初のヒトでの曝露(challenge)研究が開始され41),データはまだ利用できないが,最初の3人の被験者が予想外の出来事はなく,隔離を完了した42).動物における免疫応答を調べた研究では,SARS-CoV-2感染は強固な液性応答を引き起こすことが示されており43)-45),おそらくフェレットでは最長28日間46),アカゲザルでは35日間,再感染に対する防御に寄与している47).ヒトでは,さまざまな研究により,ほとんどすべての回復期患者が検出可能な中和抗体応答をもち48)-50),また,他の呼吸器ウイルス感染と同様に35)-37)39),液性応答が再感染のリスクを大幅に減少させることが示されている6)-19)

Moderate-to-severe disease:

急性呼吸窮迫症候群の結果、数週間にわたって機械式換気が必要となるCOVID-19の重篤例では,様々なウイルス抗原に対する抗体が産生される.中和抗体の大部分は,スパイクタンパク質(宿主細胞への侵入を媒介するウイルスのエンベロープタンパク質)とその受容体結合ドメイン(RBD; ウイルスが宿主のアンジオテンシン変換酵素2[ACE2]受容体に結合するために必要なスパイクタンパク質の部分; figure 1)上のエピトープを標的としている22)51)-55)抗体応答の持続時間には大きな異質性(substantial heterogeneity)があるが50),より 軽症患者に比べて,より重症の患者は,最初の中和抗体価が高い傾向にあるが56)-58),急速に抗体価が減弱するため,これらの差は数ヶ月以内に失われることを示唆する新たな証拠がある57).このような抗体の動態は,季節性コロナウイルスやパンデミックコロナウイルスを含む他の急性感染症の動態と一致しており33),おそらく感染後のプラズマブラスト集団(post-germinal centre B細胞とプラズマ細胞の間の短命な段階; figure 2)の一過性の増加に起因している57)59)-62)

Figure 2: Overview of the adaptive immune response to SARS-CoV-2.

感染した上皮細胞にウイルスRNAが検出されると,インターフェロンや炎症促進性サイトカインが産生される.樹状細胞は,PAMPs(例えば,ウイルスRNA)と炎症マーカー(例えば,インターフェロン)の存在を認識し,活性化される.活性化された樹状細胞はリンパ節に移動し,抗原(MHCクラスIまたはクラスII分子上に)と共刺激分子(co-stimulatory molecules)を未熟T細胞に提示し,T細胞はCD8+細胞傷害性Tリンパ球,CD4+T細胞,Tfh細胞(いずれも長期記憶細胞に分化しうる)に分化する.Tfh細胞はB細胞と相互作用して活性化し,B細胞はプラズマ(形質)細胞(特定のウイルス抗原に対する高親和性の抗体を産生する)または記憶B細胞に分化する.感染した上皮細胞のファゴリソソーム(phagolysosomes)で処理されたウイルス抗原は,MHC分子を介して細胞表面に提示される.末梢循環している細胞傷害性Tリンパ球は,CD8-T-cell共受容体を介して抗原を含むMHCクラスI分子を認識し,CD8-T細胞共受容体とMHCクラスI分子との相互作用により細胞傷害性Tリンパ球が活性化され,炎症促進性サイトカインやグランザイムなどの細胞傷害性顆粒(cytotoxic granules)が放出され,感染した宿主細胞のアポトーシスを引き起こす.しかし,SARS-CoV-2は獲得免疫応答を阻害しうる; 付属タンパク質(accessory proteinORF8はリソソームに局在し,MHCクラスI分子の上皮細胞表面への輸送をダウンレギュレートすることで(downregulates trafficking of MHC class I molecules to the surface of epithelial cells)細胞傷害性Tリンパ球を介した感染細胞の殺傷と下流の免疫活性化(downstream immune activation)を低下させる60)-62)ISGs= interferon-stimulated genes(インターフェロン刺激遺伝子).ORF8= open reading frame 8(オープンリーディングフレーム8).PAMPs= pathogen-associated molecular patterns(病原体関連分子パターン).Tfh= T follicular helper(濾胞ヘルパーT細胞).

 

 

抗体の持続時間を正確に測定するには,免疫測定法の不一致や63),報告されている多くの縦断的研究の期間が短いことが問題となっているが,現在ではより長い期間にわたって行われたいくつかの研究があり,長期的な抗体の動態に関する重要な知見が得られている.例えば,ある研究では,抗スパイクおよび抗RBD IgGと中和活性が,発症から911ヶ月後に患者の大部分(それぞれ90%60%)で持続していることがわかった64).また,別の研究では,150人中101人(67.3%)の患者(ほとんどが入院患者)で,発症から2週間後に中和抗体応答が見られ,3人を除くすべての患者で発症から8ヶ月を超えて持続したことが示された65)これらのデータや他のデータを総合すると66)67),重症患者では検出可能な中和抗体応答が812ヶ月間持続することが確認されている.これは現時点での最良の推定値であるが,SARS-CoV-2が出現してからの期間が長くなれば,より長期間の追跡調査が可能となり,推定値の精度はさらに高まるだろう.機能レベルにおいては,中和抗体応答の遅れは致命的な転帰と関連し,早期の中和はより速いウイルスクリアランスの速さと相関することが研究で示されている65)68).現在,再感染を防ぐためには,液性応答が重要な役割を果たしていることが明らかになっている6)-19)液性免疫のこの2つの側面が,(再)感染からの防御にどのように寄与しているかは,まだ十分に調査されていないが,血清中和抗体に加えて,粘膜に存在するIgAが,血清IgGよりも大きな割合で早期のウイルス中和に寄与している可能性が示唆されている69)

Mild disease:

入院を必要としない軽症COVID-19患者では,液性応答の持続時間はより多様であると思われる.軽症の医療従事者を対象とした縦断的研究によると,抗体応答には個人間でかなりの異質性が見られたが,スパイクS1ドメインに対する抗体(ウイルスの中和とよく相関する)は,45ヶ月の間に143人中31人(21.7%)で検出不能になったことが分かった70).これらの結果は,無症候性から軽症〜中等症の症状を呈する2246人を対象とした英国での研究結果と概ね一致しており,6ヶ月後までに血清陰性に戻った割合も同様であった; しかし,他の研究者も示しているように70)71),この結果は免疫測定法の選択と密接に関連していた63).軽症疾患から回復した15人の患者を対象にした縦断的研究(より短期間で行われた)では,持続的に循環する抗RBD IgGと,ウイルスに曝露したと推定される3ヶ月後に,中和抗体を産生できる抗RBD記憶B細胞(MBCs)が生成されていることがわかった72).この結果を受けて,30,000人を超える疑いあるいは確定症例(95%が軽度または中等度の症状)を対象とした研究では,セロコンバージョンを示した人の90%に検出可能な中和抗体(抗スパイクIgG抗体価と相関していた)を認めたことが報告された.さらに,これらのスパイク標的抗体は,発症してから最長で5ヶ月間持続した73); この期間は,軽症〜中等症疾患後に回復した64人の患者を対象とした研究でも支持されている49).また,軽症患者の中には,弱い一次液性応答(weak primary humoral responses)を示す人の割合が多いという証拠もある74)75).例えば,軽症疾患から回復した175人の患者を対象とした調査では,約30%の患者が非常に低い中和抗体価を示し,10人の患者は検出限界以下の抗体価を示した75).注目すべきことに,抗体価は年齢とよく相関しており,より高齢の患者で高レベルが観察された75)全般的に,液性免疫応答の持続期間は,患者の症状が軽度であるほど,より明確ではなく(the duration of the humoral immune response is less clear for patients with milder symptoms),研究内および研究間でかなりのばらつきがあるが,データは56ヶ月間を超える長い応答と一致している可能性はある

Asymptomatic disease:

無症候性患者では,症候性患者と比較して,循環抗体レベルの低下がよりも顕著であると思われる.中国の無症候性患者37人と症候性患者37人を比較したところ,急性期におけるIgG抗体有病率は,それぞれ81.1%83.8%と同程度であった76).しかし,発症から8週間後の回復期には,無症候性患者の40.0%IgG血清陰性にリバートしたのに対し,症候性患者では12.9%であった.また,ほぼすべての患者でIgG抗体価と中和率が低下する傾向が見られ,循環液性応答の短期的な性質(short-lived nature)が強調された76).中国の武漢で行われた63人の無症候性患者の解析でも,同様の結論が導き出されており,そのうち36.5%は中和抗体を産生しなかった; 中和抗体を産生した患者の循環レベルは25日後に低下し始めた74)SARS-CoV-2陽性の254人を対象とした解析では,症状がより軽い,あるいは無症候性の外来患者の抗 RBD 抗体価(IgAIgMIgG)は,入院治療を必要とする重症患者よりも低かった51).同様に,抗体価は,症状が軽い人ほど急速に低下した.疑似ウイルス中和アッセイでは,ウイルス中和は抗RBD IgG抗体価とよく相関し,入院患者は外来患者よりも中和活性が高いことが示された51)これらの研究結果を総合すると,SARS-CoV-2特異的抗体価の減弱は疾患経過の本質的な側面であるが,最初の応答の大きさと低下の速さは疾患の重症度によって異なることが示唆される.しかし,これらの研究で指摘された抗体価の低下は,SARS-CoVMERS-CoVなど,他の呼吸器ウイルスに感染した後の液性応答の動態について知られていることと,まず間違いなく(arguably),一致している20)32)

Memory B cells:

循環抗体は,免疫防御を推定する簡単な方法であるが,長期的な免疫の唯一の指標ではない.ウイルスクリアランス後に,抗体を産生するプラスマブラスト細胞集団は減少し(contract),特殊なMBCsプールが残る77); このことが,様々な研究で見られた循環抗体の減少を説明していると思われる57)59).中和抗体は512ヶ月間で低下する可能性があるが,MBCsは維持あるいは頻度が増加し77)-81),広範なクローン拡大を行い80),再曝露時に強固なRBDに対する中和抗体を生成することができる72)78)したがって,中和抗体を産生できるMBCsの寿命が長ければ,相対的に短期間の循環抗体応答のピットフォールを和らげる(counteract)かもしれない78)

また,MBCsの産生は,感染から疾患の治癒までの時間を示す有用な指標となるかもしれない.例えば,MBCsの頻度は,症状の持続時間と負の相関があり82),感染から回復すると増加することが分かっており83),疾患重症度を改善する役割を果たす可能性が示唆される.感染やワクチン接種後のMBCsの動態を明らかにする研究は有益であるが(panel41)84)85),このような研究には煩雑な(cumbersome)アッセイが必要であり,多くの臨床あるいは学術的環境では実施できないかもしれない.

いくつかの研究では,重症患者において,非典型的MBCs集団(MBCsの典型的な特徴であるCD21CD27を発現していない,またはダウンレギュレートしている)が増加していることが指摘されており,これはマラリアやHIVなどの慢性感染症での知見と一致している83)86).これらの非典型的MBCsの機能としての意義は完全には解明されていないが,回復時にその頻度が減少し,COVID-19で死亡した患者では増加することから,患者のより不良なアウトカムとの関連が示唆されている83)これらの知見から,クローン的に増殖したMBCsは,一次感染後6ヶ月を超えて持続する可能性が高いと考えられるSARS-CoV-2の再感染に対する持続的な防御に対する免疫記憶の相対的な寄与は不明であるが(panel),特により高齢患者では,時間の経過とともにMBCsが非中和プロファイルに進化する可能性を示唆する新たな証拠が出ており,ワクチン接種の有益性が強調されている87)

Panel:

Future research: unanswered questions and proposed studies

What is the minimum protective threshold of anti-SARS-CoV-2 serum neutralising antibodies?

Human challenge studies41) are needed in which infectious dose can be carefully controlled and neutralising antibody titres longitudinally measured at post-challenge and rechallenge; limitations of this approach include the potential for susceptibility to be elevated under artificial conditions84)

 

Is protective immunity against homologous rechallenge maintained in the absence of a sufficient primary neutralising antibody response?

Prospective cohort studies should be undertaken in which individuals are followed from a primary to secondary infection, with serology and genomics analyses at each time point; only patients with no previous known exposure to SARS-CoV-2 should be included

 

To what extent does strain variation after primary infection influence the likelihood of reinfection?

Genomic studies are needed to examine the likelihood of reinfection with homologous strains compared with heterologous strains; in-vitro and in-vivo immunological studies that control for differences in strains are also required

 

Why do some secondary infections result in less severe disease, whereas others cause more severe disease relative to primary infections?

Patient cohorts should be followed over time, with measures of multiple aspects of the immune response, in addition to clinical characteristics, after primary and secondary exposure; limitations of this type of study might include difficulty in controlling for genetic differences in infecting strains, which could influence the exposure and outcome variables

 

How do compartment-specific immune repertoires relate to peripheral blood immune responses?

Further studies are needed to compare bronchoalveolar lavage fluid with paired samples of blood from infected patients85)

 

 

Cell-mediated immunity in natural SARS-CoV-2 infection:

呼吸器ウイルス感染に対する細胞性免疫の役割については,多くの証拠が蓄積されている.SARS-CoVA型インフルエンザウイルスを含む様々な呼吸器ウイルスに対する抗体応答は一過性であるのに対し,T細胞応答は,内部(細胞傷害性T細胞の場合)および保存されたタンパク質を標的とするため,より長寿である傾向がある88).例えば,SARS-CoV感染患者の6年間の追跡調査では,61%の患者に記憶T細胞(MTCs)が見られたのに対し,MBCsは見られなかった27)SARS-CoVMERS-CoVに関するさまざまな研究でも,長期的な免疫防御を維持し,臨床疾患の重症度を低下させるためには,T細胞応答が重要であることが示されている88)-90).同様に,COVID-19の重症度は,T細胞数(そしてリンパ球減少は重症COVID-19の典型的な徴候である)と負の関係にあり91),炎症促進性サイトカインの豊富さと正の関係にある92)-94)したがって,いくつかの研究では,SARS-CoV-2クリアランスには,適切な割合の細胞媒介性応答が非常に重要であることが指摘されている.これらの研究では,世界数ヶ国の様々な臨床症状の患者コホートを対象に,CD4+ヘルパーT細胞95)CD8+細胞傷害性T細胞96)の主要なレパートリーを含む,末梢血中のT細胞の機能解析が主に行われてきた(figure 2).しかし,末梢血細胞反応(peripheral cellular responses)と組織内反応(tissue-resident responses)との間には相関関係が乏しいことがあり85)97),今後の研究では比較対象となる免疫レパートリーに焦点を当てる必要性を示唆している(panel).

Cell-mediated responses to disease severity:

T細胞応答のエピトープ特異性を定義するためには,その幅広さがウイルス免疫逃避の可能性に重要な意味を持つことから,様々な手法が用いられてきた.特に,多数のエピトープを組み合わせたメガプールを用いて,さまざまな疾患経過からの回復期にある患者のウイルスプロテオーム全体におけるCD4+およびCD8+T細胞のエピトープ結合特異性を包括的にマッピングしたところ,いくつかの重要な知見が得られた.第一に,発現量の多いウイルスタンパク質には,それに比例してCD4+T細胞応答が大きくなる傾向があり,その上位3位の標的は,スパイク(27%),膜(21%),ヌクレオカプシド(11%)である98).これは,CD4+およびCD8+エピトープ特異性に関する他の研究でも裏付けられている99)

第二に,スパイク特異的CD4+応答は,抗RBD IgG抗体価の大きさとよく相関しており,ウイルスに対する細胞性および液性応答が協調していることを示している98); 実際,協調性の欠如は,より重篤な疾患と関連している.第三に,抗体が検出されなくても,無症候性感染者では強固なMTC応答を起こすことができる98)101)-103).最後に,CD4+T細胞とCD8+T細胞は,幅広いエピトープ結合標的を持っている(ある研究では,ドナーごとにそれぞれ19個と17個のエピトープ結合標的を持っていた99)これらの結果を総合すると,SARS-CoV-2感染に対する細胞媒介性免疫は,わずかな変異の変化に対しても強固で持続性(durable)があることが示唆される

液性応答と同様に,細胞介在性応答の大きさも疾患重症度と関連していると思われる.例えば,COVID-19が確認されて入院した1018人の患者を対象とした2施設の後ろ向き研究では,生存者に比べて非生存者ではすべてのT細胞数が少なく,その差は特にCD8+T細胞で顕著であった.実際,年齢,性別,併存疾患を調整した多変量解析では,CD8+T細胞の少なさが死亡率の独立した危険因子であることがわかった104).これらの結果は,SARS-CoV-2特異的IFN-γ分泌T細胞の早期の検出と,より速いウイルスクリアランス,そしてより軽度の症状の間の関連性が明らかになった,重症患者の小規模コホートを対象とした縦断的解析の結果と一致している105)COVID-19入院患者522人を対象とした後ろ向き研究では,集中治療室で治療を受けている患者の総T細胞数は、より軽症疾患の患者に比べて60%少なかった106).また,炎症促進性サイトカインの過剰産生は,患者の予後104)T細胞数106)のいずれにも悪影響を及ぼしており,炎症促進性サイトカインの過剰産生がT細胞の生存や増殖をダウンレギュレートする役割を果たしていることが示唆される.重篤なアウトカムを軽減する上でのT細胞の重要性と合わせて,SARS-CoV-2特異的T細胞数は年齢の上昇とともに減少する106); おそらく,一般的に高齢者では予後がより悪くなる可能性が高い107)ことを説明している.実際,重症化した患者では,T細胞疲弊を示すマーカーである,programmed cell death 1 receptorの発現が増加している106)これらの知見を総合すると,SARS-CoV-2感染においては,効果的なT細胞応答が重症アウトカムに対して防御することが示唆される

Cell-mediated aspects of immune memory:

細胞介在性免疫記憶が形成されると,ウイルスの再曝露による重症化を長期的に防ぐことができる.過去のパンデミックコロナウイルスに関する様々な研究では,MTCs応答がMBCs応答よりも長く持続することが示されており27)108),再曝露時に重症疾患に対して防御することが示されている88)-90).例えば,CD4+MTCsあるいはMBCsがなく,CD8+MTCsを持つマウスに高用量のSARS-CoVを投与すると,サイトカインや細胞溶解分子(cytolytic molecules)の産生を含む効果的な免疫応答が起こり,ウイルス量が減少して,致死用量のSARS-CoVでも生存することできた90)SARS-CoV-2感染の細胞介在性の側面に関する研究では,感染によって長寿命の細胞傷害性MTCsが産生されることが示されており,ある縦断的研究ではCD8+MTCsの半減期は125225日と推定されている81).さらに,CD8+MTCsの大部分は,表現型的に最終分化したエフェクター記憶細胞であることが明らかになった81).これらのMTC亜集団は,A型インフルエンザウイルス感染時の重症疾患に対して防御的であることから109)SARS-CoV-2の二次感染はより軽度である可能性が示唆されている(ただし,この種の研究で将来直面する可能性のある交絡因子については,panelに概説した).

細胞介在性免疫記憶は,それ自体のみならず,液性免疫応答との連携がMBCsの産生に大きな役割を果たしているため,重要である.二次リンパ器官のB細胞帯に存在するCD4+T細胞の特殊なサブセットである濾胞ヘルパーT細胞(Tfh: T follicular helper cellsは,このプロセスにおいて重要な役割を果たしている.Tfh細胞は,胚中心B細胞(germinal centre B cells)のpositive selection,増殖,そして長寿命の抗体を分泌するプラズマ(形質)細胞やMBCsへの分化,に影響を与えるために,胚中心B細胞に共刺激を与えるfigure 2110).このように,末梢血を循環するTfh細胞の解析は,SARS-CoV-2感染による液性免疫記憶の程度を理解するための有用な手段となる111).これらの研究では,スパイク特異的細胞を含む記憶Tfh細胞の相対的な頻度が,長期間(>6ヶ月)を超えて非常に安定していることが示されている81).注目すべきことに,COVID-19重症度の低下に関連するケモカイン受容体6を発現するTfh細胞が100)Tfh細胞集団の大部分を占めており72)81)100)111),相対的に長い期間にわたって頻度が持続している,あるいは増加している81)T細胞は,抗体よりも保存されたエピトープを標的とすることが知られており88),ウイルスクリアランス,再曝露時の重症度の低下,親和性の高い(affinity-maturatedB細胞およびMBCの両方のプール形成に重要な役割を果たしていることから112)これらのデータは,SARS-CoV-2に対する細胞媒介性免疫記憶が,再感染に対する効果的な防御となる可能性を提起しているが,疑問点も残っている(panel

Humoral immunity and prevention of reinfection:

SARS-CoV-2に対する液性応答の時間的動態を調べた研究は数多くあるが,液性免疫の低下が再感染からの防御を減少させるかどうかを評価した研究は少ないが増えてきている.残念ながら,再感染の報告には,RT-PCRアッセイによる長期にわたる陽性反応(figure 3113),ウイルス排出の持続,ウイルスの再活性化など,いくつかの要因が絡み合っており,これらすべてが,真の再感染症例と,長期にわたる陽性反応を示す単発感染症例との区別に不確実性をもたらしている.いくつかの症例研究では,単独または1つ以上の陰性検査によって挟まれた陽性検査の間の期間に関する情報と組み合わせた,ゲノムシーケンスを用いて,これらの2つの異なる可能性を分離することができた(table 16)-14).一次感染から二次感染までの期間が短く,遺伝子の変化が少ない症例,特に中国の一部の患者(table 1)は14),真の再感染症例ではなく,PCR陽性の期間が長期化している可能性がある(特に下気道,血液,糞便からサンプルを採取した場合には,患者は感染後>6週間を超えてもPCR陽性である可能性がある113)114); figure 3).このリスクは,一次感染と二次感染の間の最小期間を,既知のPCR陽性期間の最大値よりも長く設定することで(例えば,6016)または9017)19)),再感染を定義するか,より短い期間でもゲノム確認と組み合わせるかによって回避することができる18).しかし,真の再感染である可能性が高い残りの症例は,再感染時の症状の重症度が予測できないことから,再感染時の症状の重症度が様々である原因を調査することが今後の重要な研究課題と考えられる(panel).

 

 

Figure 3: Associations between PCR test positivity and number of days since symptom onset for swabs taken in the upper respiratory tract and other locations.

The raw data, with uncertainties (the narrowest 68% interval in the beta distribution implied by the number of positives and number of negatives on a particular day), are plotted and an exponential fit is shown. The data show that it is possible to test positive more than 6 weeks after symptom onset, especially when the specimen is taken from locations other than the upper respiratory tract (eg, blood or faeces). Data were extracted from a published systematic review of individual data113).

Table 1: Early studies of potential SARS-CoV-2 reinfections.

Data were obtained on Feb 9, 2021. All cases had RT-PCR-negative results between first and second episodes. Ct=cycle threshold. NA=not available.

* Indicates potential reinfection cases that were not confirmed through genomic analysis.

Serological data were not analysed using a cutoff threshold to designate seropositive and seronegative; see original paper for findings.

症例研究から得られた証拠に加えて,大規模疫学研究から得られた知見は,抗体応答の防御効果と再感染のリスクに関する有益なデータとなる.例えば,英国で行われた2つの大規模な前向きコホート研究は,1つは12,541人の医療従事者を7ヶ月間にわたって追跡調査したもので16),もう1つは20,787人の医療従事者を5ヶ月間にわたって追跡調査したものであり15),ベースライン時に血清抗スパイクIgG陽性であった人は,ベースライン時に血清陰性であった人に比べて,感染リスクがそれぞれ88%83%減少したと推定されている.いずれの研究でも,再感染までの時間の中央値は56ヶ月であった.一般集団のデータは現在のところ少ないが,デンマークの400万人の集団レベルのデータセットを用いた1つの大規模なデジタル観察研究19)が,英国の研究の知見を補足している.血清状のデータは得られなかったが,この12ヶ月の研究によって,ベースライン時にPCR陽性であった場合,PCR陰性であった場合に比べて,再感染のリスクが7783%低いことと関連していた.しかし,ベースライン時にPCR陽性であった65歳以上の人は,再感染の可能性の減少は47%であり19)高齢者では殺菌免疫応答(sterilising immune response)の寿命(longevity)が短くなっている可能性が示唆された.また,この研究では、推定される再感染に対する防御では,一次感染からの経過時間によって違いがないことが示され19),再感染に対する防御は,実際には12ヶ月以上持続する可能性が示唆された.英国とデンマークの研究で再感染までの時間が異なっているのは,研究環境の選択によって説明できる可能性がある.医療従事者は感染性のある患者により近接する傾向があるため,一般集団よりも高いウイルス量を受領し,より多くの種類のウイルス株に遭遇する可能性があるので,この集団では再感染までのタイムフレームがより短くなると予想される.

米国の320万人を対象とした別の後ろ向きコホート研究では,ベースライン時にIgGIgAIgMのいずれかの抗体が陽性であった人は,ベースライン時に血清陰性であった人に比べて,90日後のPCR検査で陽性になるリスクが10倍低くなることが示された17).これらの知見を裏付けるように,カタールで行われた前向きコホート研究の結果によると,最初に血清反応陽性であった人の7ヶ月間にわたる再感染の発生率は,最初に血清反応陰性であった人の再感染の発生率よりも約95%低いことが示された.デンマークのコホートと同様に,7ヶ月間にわたって再感染に対する免疫が減弱したという証拠はなかった18)SARS-CoV-2が出現してからの期間が短いため,観察研究には限界があるが,現在の証拠によると,再感染は一次感染から512ヶ月以内に起こる可能性があり,これは他の急性呼吸器ウイルス感染と同様の期間である(table 2

15)16)17)18)19)35)36)37)39)115)116)117)118)119)120)121)122).しかしながら,alphaB.1.1.7),betaB.1.351),gammaP.1),そしてB.1.617系統,その亜型であるdeltaB.1.617.2)を含む(ただし、これらに限定されない)懸念されるvariantsVOCs)による中和からの逃避で,入手可能なデータによって示唆される再感染までの期間が短くなるかどうかは明らかではない123)124)125)126)127)128)ヒトコロナウイルスやA型インフルエンザなど,他の呼吸器ウイルスの研究では、同種の再感染(homologous reinfection)はまれであることが示唆されているが84)115)SARS-CoV-2ではあまりはっきりしていない.この点を調査するために行われる可能性のあるさらなる研究や,関連する疑問点については,パネルに記載した.全体として,ここで取り上げた研究は,SARS-CoV-2再感染に対する防御としての宿主応答にとって,液性応答が重要な要素であることを示している.

 

 

Table 2: Comparison of basic biological, epidemiological, and immunological features of common respiratory viruses and SARS-CoV-2.

Adaptive immunity after SARS-CoV-2 vaccination:

Evidence from vaccine trials:

自然感染とは別に,承認されたSARS-CoV-2ワクチンによっても,強固そして長期持続する可能性がある免疫応答が得られるという証拠がある4)129).様々なSARS-CoV-2ワクチンが開発されており,11種類が第3相試験で効果を示し,270種類を超えるワクチンが開発中である130)131).特に,エボラ出血熱132)やマラリア133),そして最近ではSARS-CoV-2 4)のために開発されたアデノウイルスベクターワクチンは,強固な細胞性免疫応答を誘導することが知られている.例えば,SARS-CoV-2アデノウイルスベクターワクチンChAdOx1 nCoV-19Oxford-AstraZeneca)の第1/2相試験では,ワクチン接種後に早くも7日時点でスパイク特異的T細胞応答が誘発され,56日目まで維持されたことが示されている129).末梢血単核細胞を用いたex-vivo IFN-γ酵素結合免疫スポットアッセイ(ELISA)を用いた第2/3相のフォローアップ試験では,スパイク特異的T細胞が初回接種後14日時点でピークに達し,最終測定日である42日目まですべての年齢層で高いレベルで維持されたことが示された134).その他のSARS-CoV-2ワクチンも有望視されている.mRNAワクチンであるBNT162b2Pfizer-BioNTech)の初期の臨床試験データでは,16歳を超える人を対象に,2回目接種後少なくとも7日時点で発症予防の有効性が95%であることが示された3); しかし,その後のデータでは,最近循環しているvariantsに対する有効性は低下することが示されている125)135).このワクチンの第1/2相試験では,2回目接種(ブースター)の7日後に,様々なスパイクエピトープに対して,強固かつ相関性のあるCD4+およびCD8+ T細胞応答が確認された136).さらに,mRNAワクチンであるmRNA-1273Moderna)は,第1相試験において,IL-2,腫瘍壊死因子,IFN-γを同時に産生し,強固なCD4+タイプ1ヘルパーT細胞応答を誘発した137)ワクチンの導入計画では,同種ワクチンを接種することになっているが,in vivo研究では,異種ワクチン接種によって,より強固な細胞介在性応答が得られる可能性があり138),それゆえ重症症状に対しての防御がより長く持続する可能性が示されている

数多くの臨床試験で,ワクチン接種後の参加者の強固な液性応答が示されている.例えば,ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの2回目接種後では,抗スパイクIgGの増加が観察され,これはすべての年齢層で中和抗体価とよく相関していた(ただし、以下のVOCsのワクチン誘発性中和についての議論を参照)134).加えて,BNT162b2 ワクチンの第1/2相試験では,初回接種後の中和力価が自然感染した回復期患者で観察されたレベルを上回ったことが確認されている; しかし最近の研究では,ワクチン接種前に感染した人は,それまでに曝露されずに,2回目接種をした人と同等またはより強い免疫応答を起こすことが分かっている136)139).疑似ウイルス中和アッセイにおいて,ワクチン接種者の血清サンプルは,多様なSARS-CoV-2スパイクvariantsを中和した(ただし,VOCsに対する免疫応答についての議論を参照)136)mRNA-1273ワクチン接種後の液性応答も大きく,2回目接種後にはすべての参加者で血清中和が検出された137)

Correlates of protection:

ワクチンの第3相試験は,症例数,入院,死亡の減少に関する新たなデータとともに140)141),世界各国でのワクチン展開の成功を示している.これらの試験は,VOCsが検出される前に実施されたもので,中和抗体価を防御の相関(すなわち,感染や疾患に対する防御に関連する免疫マーカーまたは閾値)として使用していた.しかし,主要な抗体価閾値の同定を含め,適切でより具体的な防御の相関が依然として必要である重要な理由がいくつか考えられる; (1)信頼できる防御の相関が欠落している場合,次世代ワクチンの開発は,新しいvariantsの出現に大幅に遅れる可能性が高い.なぜなら,これらの新しいvariantsに対するワクチンの有効性を確立するために,大規模でコストのかかるフィールド試験を実施しなければならないからである.ワクチン逃避変異に直面すると,このような無作為化比較試験は倫理的に不可能になるかもしれない(あるいは,発生率の低い集団では実現不可能になるかもしれない); (2)具体的な防御の相関を同定することで,粗有効性(crude effectiveness)ではなく,免疫学的な閾値によって異なるワクチンを直接比較することが可能になるだろう; (3)すべてではないが,防御の相関に関する情報は,数理モデルパラメータに使用することができ,ワクチン由来の防御の持続性を予測し,パンデミックやパンデミック後の介入に役立つ可能性がある.

SARS-CoV-2のような急性感染では,中和抗体,または非中和だが機能抗体が適切な防御の相関と考えられることが多く35)131)143),この仮説は,再感染からの防御に関する証拠からも支持されている6)7)8)9)10)11)12)13)14)15)16)17)18)19)しかしながら,特定の抗体価閾値を定義することは,いくつかの理由から困難である.例えば,防御の相関は,感染とワクチン接種の間で,またワクチンの種類によっても異なると考えられ,過去の曝露136)139)144)145),新たなvariants,そして免疫不全143)によってもおそらくは変化する.さらに,感染や疾患に対する防御の相関に焦点を当てるかどうかによって,おそらくは重要と特定されるマーカーや閾値が変わってくる; その顕著な例が麻疹ワクチン接種で,特定の抗体価は疾患に対する防御に寄与するが,必ずしも感染に対する防御には寄与しない143)146)SARS-CoV-2ワクチンによる防御の相関はまだ明確になっていないが143)147)7種のワクチンの第3相データを統計的に解析した結果,2回目接種後14週間に測定された中和抗体またはIgG抗体価(いずれも共通の基準で校正されている)が,ワクチン効果におけるばらつきのそれぞれ78%94%を説明するかもしれないことが示された.重要なことは,これらの知見は,VOCsのウイルス中和およびワクチン有効性の低下との関連性が報告されていることと一致しており128)148)149)150)151),一方でワクチン誘発抗体は中和されなくても防御効果があるというこれまでの考え方を支持されている可能性もある131)7つのワクチン試験と回復期血清サンプルから得られたデータを予測モデルに組み込み,防御の免疫的相関性を調べた別の研究では,重症疾患に対する防御に必要な中和は,検出可能な感染に対する中和よりも6.5倍を超えて低いと推定されている152)これは,防御免疫が減弱した場合は,再感染の可能性が高いが,そのような例は一般的により軽症であることを示唆している.このモデルはまた,中和抗体の半減期が自然感染とワクチン接種で同等であることを示唆している152).しかし,これらの知見を裏付けるためには,さらなる研究が必要である.そして他の免疫学的マーカーは,ワクチン接種後の防御免疫に重要な影響を与える可能性が高く(たとえば,MBCs153),中和抗体価が低い場合の防御の所見を説明できるかもしれない131).今後来るべき数ヶ月〜数年の疫学研究や次世代ワクチンの開発や展開に役立てるためには,他の重要な免疫学的マーカーに加えて,防御抗体価の閾値152)を含む防御の相関関をより詳細に明らかにする必要があるだろう.

Conventional prime-boost strategy:

承認されているCOVID-19ワクチンの大半は,(同種)2回接種のプライム-ブースト戦略を採用しているが,単回接種のアデノウイルスベクターAd26.COV2.Sワクチン(Janssen)など,ごく少数の例外がある.個人の感染歴に関わらず,このような一律(blanket)の戦略を適用すべきかどうかは,新たなデータによって疑問視されている.蓄積された証拠は,初回ワクチン接種前に感染した人のワクチン後の免疫応答は,従来のプライム-ブースト接種を受けた非感染者の免疫応答と同様か,それ以上に強固である可能性を示唆している136)139)144)145)

しかし,多くの不確定要素が残っており,曝露状態144)に基づいて2回目接種を行うことはリスクの高い戦略となる可能性に留意することが重要である.例えば,曝露者が初回のワクチンを接種した場合,非曝露者が従来のプライム-ブーストワクチン接種をした場合と比べて,VOCsの再感染に対して同等の防御が得られるかどうかは不明である(in vitro研究ではその可能性が示されているが153)).対照的に,VOCsに対するワクチン防御に関する新たなデータは明確である: ワクチンの種類にかかわらず,2回接種は1回接種に比べて,VOCsへの感染を大幅に防ぐことができる125)135).さらに,関連する免疫細胞の長期的な動態は,これらの2つの戦略のどちらを使用するかによって大きく異なるかもしれない; 初期のデータ136)139)144)145)153)は,この問題を厳密に評価できるようになってきたばかりである.より慎重なアプローチではあるが,提示された証拠の重要性を認識した上で,これまでに曝露していない人への2回目接種を優先するものの144),論理的に可能であれば,曝露した人にも2回目接種を行うのかもしれない.このようなアプローチは,2回目接種を受けた人におけるブレイクスルー感染の発生頻度が,曝露していない人よりも曝露したことのある人の方が低いことを示すデータによって裏付けられている(BNT162b2ブースター接種を受けた曝露者の3ヶ月累積発生率が0.42%であるのに対して,ブースター接種を受けた非曝露者の3ヶ月累積発生率は0.90%であった155).しかし,ワクチンの在庫が限られている資源の乏しい環境では,過去に曝露していない人に2回目接種を集中的に行うことで153),公衆衛生システムの負担を軽減する資源配分の方法を提供することができる.

Immune response against variants of concern:

2020年後半には,ACE2との結合親和性を高めるRBDおける置換(特にLys417AsnGlu484LysAsn501Tyr)を持ついくつかのvariants156)157)が出現し,開発中のワクチンの効果が懸念されているVOCsに対するT細胞応答に関するデータは少ない(査読付きのデータも少ない)が,存在するデータは心強いものである.例えば,BNT162b2ワクチンを接種した医療従事者121人を対象とした研究では,野生型タンパク質と比較してalphaおよびbeta variantsスパイクタンパク質プールで血清サンプルを刺激しても,CD4+T細胞の活性化に変化は見られなかった158).さらに,BNT162b2またはmRNA-1273ワクチンの2回目接種を受けてから14日後に血清を採取した研究では,MTCsは祖先株とVOCsalphaepsilon[B.1.429CAL20Cとしても知られている]gamma)に対して,beta variantsではCD4+応答が29%CD8+応答が33%低下したものの同等の反応を示したことが示唆された159).別の研究では,回復者のCD8+T細胞応答は,beta variantのスパイク変異(Asp80Ala)を除いて,循環しているvariantの大部分のエピトープを認識していた160).後者の2つの研究は,ワクチン接種者の血清サンプルに基づいたものではないが,これらのデータは,T細胞の交差反応性がVOCsに対してある程度の防御をもたらすはずであることを示唆している.しかし,防御の相関がはっきりしないため143)147)VOCsが中和から逃避する可能性を示す新たな証拠があるものの,この交差反応から免疫逃避できるエピトープの変異の程度は不明である.これらの結果を総合すると,SARS-CoV-2ワクチン接種は,RBDを含むウイルスゲノムの変化に強い細胞媒介性応答を引き起こすことが示唆されるしかしながら,VOCsに対する細胞介在性応答に関する証拠は乏しく,我々の理解は限定される

VOCsに対する液性応答についてもデータが出てきており,自然感染とワクチン接種の両方でウイルス中和が減少することが様々な研究で指摘されている123)124)156)161)162)163)164)最も注目すべきは,ワクチン接種者の血清から中和逃避したbeta variantの複数の報告である.例えば,BNT162b2またはmRNA-1273ワクチンを2回接種した人を対象にしたある研究では,このvariantに対する中和活性が野生型に対する中和活性よりも1012倍低下し156),別の研究では中和が1942倍低下したと報告されている124).さらに,これらの影響はワクチン効果の低下につながると思われる: 南アフリカで行われたChAdOx1 nCoV-19ワクチンの試験では,軽症〜中等症COVID-19に対する効果が(2回目接種から14日以上経過後に測定),南アフリカの初期のvariant75%の効果)に比べ,beta variant10%の効果)では大幅に低下した148).これらの結果は,ナノ粒子スパイクタンパク質ワクチンNVX-CoV2373Novavax; 正式には未発表)の臨床試験の中間解析結果である,beta variantに対する効果は初期のvariantよりも低いというとも一致していた149)BNT162b2ワクチンまたはmRNA-1273ワクチンを2回接種した人の血清サンプルから得られたウイルス中和は,gamma variantに対しては47倍,zetaP.2variantに対しては36倍低下していた124)BNT162b2またはmRNA-1273ワクチンを接種した人の血清を用いた他の多くの研究では,alpha variantに対する中和がわずかに低下し163)164),または複数のvariantsに対する中和プロファイルがほとんど変化しないことが示されている124)156)165).しかしながら,このようなわずかな免疫応答の変化であっても,ChAdOx1 nCoV-19ワクチン(ブースター接種後> 14日で測定)では81.5%(BetaCoV/Australia/VIC01/2020)70.4%alpha variant150)NVX-CoV2373ワクチンでは95.6%85.6%(測定時期は未報告)151)と,症候性感染に対する2回接種ワクチンの効果が低下することが示唆されている.2つのRBD変異を持つB.1.617系統の初期データでは,感染やワクチン接種によって誘導された抗体による中和を中程度の効率で逃避できることが示唆されている126)127)BNT162b2またはChAdOx1 nCoV-19ワクチンを1回接種した場合のdelta variant感染による症候性疾患に対する効果は33.5%で,2回接種(接種後3週間以上経過し測定)では87.9%BNT162b2)または59.8%ChAdOx1 nCoV-19)に上昇すると報告されている135).それにもかかわらず,症状の発現は検査データにあまり記録されておらず,ほとんど信頼性がないと考えられている.さらに,完全にシーケンスされたゲノムデータは少ないため,これらの知見を裏付けるさらなる公表データが必要である.

VOCsに対するワクチン誘発性免疫の持続性を評価するもう一つの方法は,ブレイクスルー感染(ワクチンを接種した人に発生した感染)に関する新しいデータを調べることである.米国ニューヨーク市の417人のコホートでは,19日前および36日前に2回目接種を受けた人に,2件のブレイクスルー感染が確認された166).シーケンスデータによると,各患者のSARS-CoV-2 variantには重要なスパイク変異があり,そのうち1人の患者には抗体中和をウイルスが回避すると認識されているGlu484Lys変異が認められた.この患者の血清を解析したところ,高レベルの中和抗体が検出され166),(おそらくワクチンによって誘発された)抗体によるウイルス中和を逃避したという考えをさらに裏付ける結果となった.イスラエルで行われた別の研究では,BNT162b2ワクチン接種者の鼻咽頭スワブ817本のゲノムシーケンスの結果,alphaおよびbeta variantsは,ブレイクスルー感染(初回接種後14日以上,またはブースター接種後7日以上経過した場合と定義)に偏って存在していた.具体的には,ワクチンを接種していない対照群と比較して,ブースター用量を接種した群では,beta variant感染の証拠を示す割合が高く,一方,プライム用量を接種した群では,alpha variantに感染した割合が高かった167)VOCsによる同様のブレイクスルー感染の別の報告も出てきている155)168)

有病率の推定が可能な研究デザインのうち,これまでにブレイクスルー感染が確認されたのは,初回接種者では2.6%BNT162b2またはmRNA-1273ワクチン接種者,シーケンス未実施)169),ブースター接種者では0.48%BNT162b2またはmRNA-1273ワクチン接種者,alpha variantまたはiota-like variant[B.1 .526系統]166)0.89%BNT162b2ワクチン接種者,すべてalpha variant155)2.0%BNT162b2またはmRNA-1273ワクチン接種者,シーケンス未実施)169)であった.別の研究では,参加者をワクチン接種量別に分類していないが,BNT162b2またはmRNA-1273ワクチン接種者の間では,ブレイクスルー感染の有病率が1.13%であった(シーケンス未実施)168).ワクチン配布開始から相対的に時間が経っていないため,今後数ヶ月の間にブレイクスルー感染の頻度が大幅に増加するかどうかはまだわからない.しかし,これらの初期のデータは,ワクチン誘導性免疫の持続性がVOCsによって影響を受けることを示唆しているしかし,幸いなことに,ブレイクスルー感染があっても,その後の伝播につながることはまれであり(infrequently),そしてワクチン接種している過去の曝露者では頻度はより少ないことである(less often155)

全体として,VOCsに対する免疫応答のデータは,広範な防御を持つSARS-CoV-2ワクチンの必要性を示している(他のいくつかの研究も示唆している6)163)).コロナウイルスの変異率は,A型インフルエンザウイルスなどに比べて著しく低いため,ワクチン接種者の大部分は,12ヶ月を超えても完全に防御が失われることはないと考えられるが170),短中期的には,現在のワクチンの有効性を維持するためにアップデートが必要となるだろう; 実際,この開発はgammabetaにおいてすでに進行中である148).正確にいつこの変更が必要になるかは,防御の免疫相関を具体的に分類する我々の能力の進歩によって決定されるだろう147).さらに,防御の相関に関する理解が進んだとしても,ワクチンの開発と展開は,新たなVOCsによるアウトブレイクに大幅に遅れる可能性があり,したがって,ワクチン接種だけではさらなる流行を防ぐことはできないかもしれない.特に,免疫抑制剤を使用している患者や免疫不全患者などの高リスク集団には注意を払う必要がある.これらの人々は,特にワクチン接種と免疫抑制剤治療との調整が不適切な場合,持続的な免疫応答が得られないかもしれない(肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンを接種した免疫不全患者で実証されている171)).一般集団の間では,ワクチン接種や非医薬品的介入によってSARS-CoV-2の有病率が抑制されているため,新たなvariantの出現率は低くなり172),二次的なワクチンやその他の介入方法の開発が可能になると考えられる.

2021101日以降,一部の国では,重度の免疫不全患者,高齢者,医療従事者などの高リスク者に3回目接種を行うことが始まっている173)174).このアプローチは,我々の文献検索が完了した後に発表された論文の中で議論の対象となっており,直近のワクチン接種以降,delta variantによる感染に対する免疫が減弱していることを示すデータ175)や,3回目接種によってウイルスの中和の大きさと範囲が増加することを示唆する研究176)によって支持されているかもしれない.しかし,このような決定の公平性に関する懸念が提起されている.特に,多くの低/中所得国では1回目および2回目接種を十分に行うためのワクチンの在庫が不足しているのに対し,高所得国で3回目接種を行うことの公平性が指摘されている177).また,3回目接種を特定の集団だけではなく,より広い範囲の人々に提供すべきかどうかという問題も検討されている173)

Conclusions and future outlook:

今回のpersonal viewでは,SARS-CoV-2感染とワクチン接種に対する獲得免疫応答に関する証拠を評価し,再感染に対する防御に関する液性免疫応答と細胞介在性免疫の相対的な寄与について議論した.防御の免疫学的な相関ははっきりしていないが,中和抗体と機能的T細胞応答は,SARS-CoV-2感染に対する免疫応答の頑健性を推測するためによく用いられる

自然感染の場合,T細胞介在性応答は,液性応答よりも多様なエピトープを標的としていると考えられ,そのため,主要な免疫原性ウイルスエピトープの遺伝子変化に対してより持続性(durable)がある可能性があるとはいえ,中和抗体応答もまた,再感染に対する防御の重要な一面を担っている.この2つのタイプの獲得免疫応答を協調させることが,感染による最も深刻な結果を軽減するために重要である可能性が高い.SARS-CoV-2感染後,何ヶ月間も,特異的記憶B細胞およびT細胞集団は安定あるいは増加すら認められ,再感染時に重症化する可能性を減らすことができるかもしれない入手可能な証拠によると,再感染は一次感染から512ヶ月以内に起こる可能性があり,IgG抗体陰性の人ではその可能性が高いSARS-CoV-2伝播を抑制するための介入は,自然または人工的に集団免疫の閾値に達した場所でも必要となる可能性があり,重症度と伝播性の増加が観察されると,地域的または国レベルでの非医薬品的介入がさらに必要となるだろう.

自然感染に対する免疫応答と比較して,ワクチン接種は,主にRBDに焦点を当てた,より大きく,より高い特異性を持った反応を誘発する.新たに出現したvariantsに対する中和やワクチン有効性の低下を示す証拠が増加しており,また,ブレイクスルー感染に関するデータも出てきていることから,短中期的にワクチンをアップデートする必要があるだろう.このようなアップデートは,ワクチンによる免疫防御の相関関係をさらに調査することによって,大いなる助けとなるだろう.2021726日に文献調査を完了して以来,楽観主義に慎重さを促すいくつかの重要な報告が発表されている.例えば,スコットランドの集団(257万人)を対象とした前向きコホート研究178)では,202021年の冬(パンデミックのピーク)に,BNT162b2またはChAdOx1 nCoV-19ワクチンを1回接種した人の間で,SARS-CoV-2感染により入院または死亡したのは,わずか1196人であったことが示されている(コホートの0.1%未満).これらの結果は,米国の医療記録を対象とした大規模研究179),すなわちdelta variant感染後の入院に対するBNT162b2ワクチン2回接種の有効性は,感染に対する有効性が減弱しているにもかかわらず(2回目接種後1ヶ月で88%5ヶ月で47%),2回目接種後6ヶ月までは93%を維持していたという結果と一致している.また,新しいデータでは,BNT162b2ChAdOx1 nCoV-19mRNA-1273のいずれかの2回目接種を少なくとも28日前に受けた人は,ワクチン未接種の人と比べて,症状が長く続く(感染後28日以上)確率が半分になることが示されている(オッズ比 0.51180).最終的には,自然感染およびワクチン接種による防御免疫の持続期間が,アウトブレイクの頻度(例えば,毎日,2年に1度,または散発的)181)や症候性疾患による医療システムへの負担を決定し,ひいては今後数年間における世界各国の公衆衛生政策を形成することになる.

 

References

省略(一部掲載).

 

 

 

 

 

 

 

69)

SARS-CoV-2に対する早期の中和抗体応答はIgAが支配的である】

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https://doi.org/10.1126/scitranslmed.abd2223.

Early action of IgA:

SARS-CoV-2感染から個人を守るためには,液性免疫応答が重要な役割を果たしており,特に中和抗体活性が重要である.Sterlinらは,COVID-19重症度が異なるSARS-CoV-2感染者の血清,唾液,気管支肺胞洗浄液中の液性免疫応答を測定した.早期SARS-CoV-2特異的抗体応答では,IgA抗体IgGIgMと比較して優位であり,粘膜へのホーミング特性を持つIgAプラズマブラストの拡大と関連していた血清中のIgA濃度は発症3週間後にピークに達したが,唾液中ではさらに数週間持続しSARS-CoV-2中和において血清中のIgAIgGよりも強固であった.これらの知見は,早期SARS-CoV-2感染におけるIgAの潜在的な役割を強調するものである.

Abstract

液性免疫応答は,通常,一次IgM抗体応答,そしてそれに続く免疫記憶およびIgGIgAIgEの構成に関連した二次抗体応答が特徴的である.ここで我々は,COVID-19患者159人の血清,唾液,気管支肺胞洗浄液中の抗体分泌細胞の頻度とSARS-CoV-2特異的中和抗体の存在を含む,SARS-CoV-2に対する急性液性応答を測定した.早期SARS-CoV-2特異的液性応答は,IgA抗体が中心であった.粘膜へのhoming potentialを持つIgAプラズマブラストの末梢での拡大は,発症直後に検出され,疾患の3週目にピークに達した.ウイルス特異的抗体応答には,IgGIgMIgAが含まれたが,IgAIgGに比べてウイルス中和に大きく寄与していた血清中の特異的IgA濃度は発症後1ヶ月で顕著に低下したが,唾液中の中和IgAは発症後49日〜73日まで長く検出された.これらの結果は,再感染に対する最適な防御に関連する抗体の種類に関する新たな情報や,ワクチン療法において強固ではあるが持続時間が短いIgA応答を標的とすることを検討すべきかどうかについての重要な観察結果である.

Fig. 1: Plasmablast dynamics after SARS-CoV-2 infection.(A) Representative flow cytometry analysis of B cell subpopulations in the blood of SARS-CoV-2–infected patients. Doublets and dead cells were excluded before CD3CD19+ gating. Plasmablasts are defined as Ki67+CD19lowCD27highCD38high cells, memory B cells as Ki67CD19+CD27+IgD, and naive B cells as Ki67CD19+CD27IgD+ cells. (B) Plasmablast frequency in B cell compartment in blood of SARS-CoV-2–infected patients (n = 38, clinical characteristics in table S1) compared with healthy donors (HD; n = 9). Histograms represent medians. P values were calculated using Dunn’s multiple comparison test (*P < 0.05, **P < 0.01, and ***P < 0.001). ns, not significant. (C) Flow cytometry analysis of CCR10 expression in B cell subpopulations in blood of SARS-CoV-2–infected patients (n = 25). Samples used in this analysis were collected from day 3 to day 27 after symptom onset. Histograms represent medians. P values were calculated using Wilcoxon test (***P < 0.001). (D) Intracellular antibody expression in circulating plasmablasts in blood of SARS-CoV-2–infected patients (n = 17) using flow cytometry. Samples used in this analysis were collected from days 2 to 23 after symptom onset. Histograms represent medians. P values were calculated using Dunn’s multiple comparison test (*P < 0.05 and ***P < 0.001). (E) Intracellular IgA versus IgG expression in plasmablasts according to disease duration. Each dot represents one patient. Nonparametric Spearman correlation was calculated.

 

Fig. 2: Antibody response kinetics to SARS-CoV-2 proteins.(A) Specific IgG, IgA, and IgM against spike-1 receptor-binding domain (RBD) and nucleocapsid protein (NC) were measured using photonic ring immunoassay in 132 patients (clinical characteristics detailed in tables S2 and S3). Antibody levels are expressed as arbitrary units/ml (AU/ml). Cutoff lines are represented as gray dotted lines. The boxplots show medians (middle line) and first and third quartiles, and the whiskers indicate minimal and maximal values. P value was calculated using Dunn’s multiple comparison test (*P < 0.05, **P < 0.01, ***P < 0.001, and ****P < 0.0001). (B) Positive rates of specific serum IgG, IgA, and IgM in 132 patients at different times after symptom onset, from days 1 to 78.

 

 

 

 

Fig. 3: Neutralizing activity of serum, BAL and saliva antibodies to SARS-CoV-2.(A) Neutralizing activity of 52 sera (dilution of 1:40) from 38 SARS-CoV-2–infected patients (see clinical characteristics in table S1) was determined using a pseudovirus neutralization assay. Orange curve represents significant sigmoidal interpolation (P = 0.0082). Gray dotted curves represent 95% confidence intervals. (B) Neutralizing activity of 18 sera measured by pseudovirus neutralization assay at different indicated dilutions. Samples used for this analysis were collected between days 6 and 24 after symptom onset. Light blue color corresponds to samples with low IgA neutralization potential. (C) Neutralizing activity of purified IgG was measured at indicated concentrations from 18 sera collected between day 6 and day 24 post-symptom onset. Curves were drawn according to nonlinear regression. Light blue color corresponds to samples with low IgA neutralization potential. (D) Neutralizing activity of purified IgA from paired samples in (C). Light blue color corresponds to samples with low IgA neutralization potential. (E) Paired purified IgA and IgG IC50 values in samples tested in (C) and (D). P value was calculated using Wilcoxon test (*P < 0.05). (F) Comparison of serum anti-RBD IgA (main panel) or IgG (inset) levels measured by photonic ring immunoassay with neutralizing capacity of corresponding purified isotypes measured by pseudovirus neutralization assay. Spearman coefficient (r) and P value (P) are indicated. (G) Neutralizing activity of bronchoalveolar lavages (BALs) collected in 10 SARS-CoV-2 patients between days 4 and 23 after symptom onset (clinical characteristics are detailed in table S5). Indicated BAL dilutions were tested using pseudovirus neutralization assay. BALs obtained from SARS-CoV-2–negative patients (n = 3) showed no neutralization activity (dotted gray lines). Each colored line represents one patient. (H) Neutralizing activity and anti-RBD IgA levels (both tested at a dilution of 1:4) of saliva collected in 10 SARS-CoV-2 patients between days 49 and 73 after symptom onset. r and P are indicated. (I) Anti-RBD levels in paired saliva and serum from patients tested in (H). P value was calculated using Wilcoxon test (**P < 0.01).

 

 

 

 

76) Long QX, Tang XJ, Shi QL, et al. Clinical and immunological assessment of asymptomatic SARS-CoV-2 infections. Nat Med. 2020; 26: 1200-1204.

155) Wang P, Nair MS, Liu L, et al. Antibody resistance of SARS-CoV-2 variants B.1.351 and B.1.1.7. Nature. 2021; 593: 130-135.

167) Kustin T, Harel N, Finkel U, et al. Evidence for increased breakthrough rates of SARS-CoV-2 variants of concern in BNT162b2-mRNA-vaccinated individuals. Nat Med. 2021; 27: 1379-1384.

 

 

 

 

 

 

 

180)

COVID Symptom Studyアプリの英国ユーザーにおけるワクチン接種後のSARS-CoV-2感染のリスク因子と疾患プロファイル: 前向き,コミュニティベース,

コホート内症例対照研究

Antonelli M, Penfold RS, Merino J et al. Risk factors and disease profile of post-vaccination SARS-CoV-2 infection in UK users of the COVID Symptom Study app: a prospective, community-based, nested, case-control study.

Lancet Infect Dis. 2021; (published online Sept 1.)

https://doi.org/10.1016/S1473-3099(21)00460-6.

Summary

Background

COVID-19ワクチンは,臨床試験で優れた効果を示し,リアルワールドデータでは有効性が認められているが,一部にワクチン接種後にSARS-CoV-2に感染する人が依然として存在する.この研究では,ワクチン接種後のSARS-CoV-2感染のリスク因子を特定し,ワクチン接種後の疾患の特徴を説明することを目的とした.

Methods

この前向き,コミュニティベース,コホート内症例対照研究(prospective, community-based, nested, case-control study)では,the COVID Symptom Study mobile phone appの英国在住の成人(18歳以上)ユーザーからの自己申告データ(人口統計,地理的位置,健康リスク因子,COVID-19検査結果,症状,ワクチン接種など)を使用した.リスク因子解析では,2020128日〜202174日の間にCOVID-19ワクチンの1回目または2回目接種を受けたケース,すなわち; 1回目接種後14日以上(ただし2回目接種前; ケース1)あるいは2回目接種後7日以上(ケース2)で検査陽性に検査が陽性; 接種前に検査が陽性ではなかったケースが対象となった.対照群として,1回目接種後14日以上経過し,かつ2回目接種前で検査陰性を報告したユーザー(対照1)と,2回目接種後7日以上経過して検査陰性を報告したユーザー(対照2)の2群を選択した.対照1と対照2は,ワクチン接種後の検査日,医療従事者の状況,性別で,それぞれケース1とケース21:1でマッチさせた.疾患プロファイル解析では,ケース1とケース2の中から,SARS-CoV-2陽性と判定された後,少なくとも14日間連続してアプリを使用した参加者(それぞれ,ケース3とケース4)を選択した.対照3と対照4は,SARS-CoV-2検査陽性を報告したワクチン未接種者で,検査後連続14日以上アプリを使用しており,それぞれケース3とケース4と,陽性検査の日付,医療従事者の状況,性別,BMIbody-mass index),年齢で,1:1でマッチさせた.単変量ロジスティック回帰モデル(年齢,BMI,性別で調整)を用いて,リスク因子とワクチン接種後の感染との関連,および個々の症状,全体の罹患期間,疾患重症度とワクチン接種状況との関連を解析した.

 

Findings

2020128日〜202174日の間に,COVID Symptom Study appユーザー1,240,009人が1回目のワクチン接種を報告し,そのうち6030人(0.5%)がその後SARS-CoV-2陽性反応を示した(ケース1).また,971,504人が2回目ワクチン接種を報告し,そのうち2370人(0.2%)がその後SARS-CoV-2陽性反応を示した(ケース2).リスク因子解析では,高齢者(60歳以上)では,フレイル(frailty)が1回目ワクチン接種後の感染と関連し(odds ratio [OR] 1.93, 95%CI 1.50–2.48; p< 0·0001),貧困度の高い地域に住んでいる人は,1回目ワクチン接種後の感染のオッズが高くなった(OR 1.11, 95%CI 1.01–1.23; p= 0.039).非肥満者(BMI< 30kg/m2)は,1回目ワクチン接種後の感染のオッズが低かった(OR 0.84, 95%CI 0.75–0.94; p= 0.0030).疾患プロファイル解析では,ケース3にはケース1のユーザー3825人が,ケース4にはケース2のユーザー906人が含まれた.ワクチン接種(無接種との比較)は,1回目または2回目接種後に入院するオッズの低下発症後1週間で5つを超える症状が出るオッズの低下,および2回目接種後に長時間(28日以上)続く症状が出るオッズの低下と関連していたワクチン接種を受けていない感染者に比べて,ほとんどすべての症状は,ワクチン接種を受けた感染者では報告される頻度が低くワクチン接種を受けた参加者は,特に60歳以上の場合,完全に無症候性である可能性が高かった

Interpretation

SARS-CoV-2感染を最小限に抑えるためには,リスク集団をターゲットにして,ワクチン有効性や感染対策を強化する必要がある.我々の知見は,特にフレイル高齢者や貧困地域に住む人々に対しては,たとえワクチンを接種していたとしても,ワクチン接種後の時代(post-vaccination era)では,フィジカルディスタンスおよびその他の個人的な防護策を緩めることに注意する必要があることを示唆しており,ブースターワクチン接種などの戦略にも影響を与える可能性がある.

 

 

Figure 1: Univariate analysis of post-vaccination SARS-CoV-2 infection risk factors.

Univariate models for frailty and each individual comorbidity (A) and IMD, healthy lifestyle factors, and healthy lifestyle score (B), adjusted for age, body-mass index, and sex, and stratified by age group. The error bars represent 95% CIs. A low IMD means high deprivation and a high IMD means low deprivation. The reference category for the IMD is an intermediate IMD (4–7). IMD=Index of Multiple Deprivation.

 

 

Figure 2: Multivariate analysis of post-vaccination SARS-CoV-2 infection risk factors.

The multivariate analysis was adjusted for age, body-mass index, and sex, and was stratified by age group. The error bars represent 95% CIs. A low IMD means high deprivation and a high IMD means low deprivation. The reference category for the IMD is an intermediate IMD (4–7). IMD=Index of Multiple Deprivation.

Figure 3: Disease severity and duration factors in SARS-CoV-2-infected vaccinated versus unvaccinated participants.

Univariate models were adjusted for age, body-mass index, and sex, and stratified by age group. The error bars represent 95% CIs.

 

 

Figure 4: Symptoms in SARS-CoV-2-infected vaccinated versus unvaccinated participants.

Univariate models were adjusted for age, body-mass index, and sex, and stratified by age group. The error bars represent 95% CIs. We present only symptoms reported by more than 1% of users.

 

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