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第91回 間質性肺疾患研究会
(2015年6月,東京)

「特発性間質性肺炎の最新の話題」

(An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Statement: idiopathic Pulmonary Fibrosis: Evidence-based Guidelines for Diagnosis and Management, AJRCCM 2011)

<SessionT診断>

1) MDD: multi-disciplinary discussion.ATS2011のIPFの基準では,画像をpossible UIPとせざるを得ない(このCT基準は不満が多い).病理ではprobable UIPではあるが,NSIP/Pもありdiscordant UIPとした.ステロイドは効果がなく,PFD 1200mg/day開始,16ヶ月安定したが,その後HOTになった.PFD始めて22ヶ月で%VC-35%.これはIPFの経過に矛盾しない.このケースからは病理的にdiscordant UIPでもPFDを投与すべきと考えられた.

2) CPFEという言葉があるが,国際的にはIPF+気腫病変とされる.IPFは喫煙者も多く,IPFと診断されても禁煙で少しVCは良くなる

3) 画像はpossible UIP,病理(死後)では,UIP+f-NSIP+org.DAD.
Asymmetrical IPF(Tcherakian C et al. Thorax 2011):右肺野に多く(62.5%),急性増悪を起こしやすい(62.5%).生存期間は37±30ヶ月.

<SessionU病態と診断>

4) 金属粉塵曝露はIPFの危険因子である.アルミニウム,ケイ素の検出が有意との報告がある.患者はニッケル,クロム扱う仕事に40年以上従事していた.新潟大学でX線マイクロアナライザー(EPMA)を行った.病理ではニッケル,クロム,チタンに加えて,マンガンやジルコニウム(この2つは肺から検出されることはないらしいことからも,職業性が示唆される)も検出された.パターンはUIPで一部にairway centered fibrosis(ACF)が見られた.ACF部位の金属分析が上記のようにpositiveであった.IPFの線維化部分(すなわち辺縁部)にはどのような金属沈着があったかという質問があったが,気道周囲箇所しか金属分析はしていないとのこと.

5) 石綿肺のヘルシンキ基準は光学顕微鏡のもので,BALFの電子顕微鏡での基準はない.電子顕微鏡下粉塵解析(EMA)は特発性と職業性の鑑別に有用かもしれないという発表.電子顕微鏡の粒状物質の元素解析では,鉄とリンは職業曝露に相関して増加していた.

6) CT値で区分した肺体積(CT値-950HU〜-701を正常とする)にて,MCT,WL(全肺体積),NL(正常肺体積),NL%を求める.WL=TLC,NL=VCとおおむね一致.UIP/Pを呈するIPFの病期分類において,NL%は%FVC,%DLCOより有用であった.今後はぜひmortalityとの関連を調べたい.

7) 2011ATS基準における,HRCT上possible UIPとされた間質性肺炎のVATSの検討.INPULSIS試験では2011ATS基準以上にpossible UIPの選択基準が拡大されている.CTにてdefine UIP: 0例,possible UIP: 15例,inconsistent UIP: 11例であった.Possible UIPのうち病理ではNSIPが2例,ACFが1例,12例はUIPに矛盾しない所見ではあったが,臨床的にはIPF: 7例,CHP: 4例,抗ARS症候群: 1例であった.結局,ATS2011基準でCTがpossible UIPでもMDDの結果IPFと診断したのは7例であった.CT基準は問題で,当院のベテラン放射線科医が読影すると,多くはinconsitent UIPになる.今回は若手の放射線科医にATS2011と照らし合わせて読影してもらった.

<SessionV治療>

8) IPF急性増悪に対してステロイド+PFDを使用した検討.60日生存は,PFD使用群は生存7例,死亡1例,PFD非使用群は生存8例,死亡3例であった.死亡は非使用群に多いが有意差なし.めまい,食欲低下の副作用は1例のみ.P/F ratioに両群有意差なし.急性増悪再発は非使用群のほうが多かったが有意差なし.PFDをいつから使うのか?.早期から?.

9) 強皮症ではないSsc関連自己抗体(U1-RNP,Scl-70,セントロメア)陽性間質性肺炎におけるPFD治療の検討.DLCO,SGRQ,mMRC,6MWTは有意差がでなかったが,%FVC-4.5%の低下が+1.7%になった.Sscと診断されている間質性肺炎に対してもPFDの前向き研究(LOTUSS study)が行われ,今後第3相試験が行われる予定とのこと.強皮症の診断基準(ACR/EULAR)が変わり,上記3つの抗体が陽性で3点,間質性肺炎があれば3点,レイノー現象があれば2点で,計8点,9点以上でdefinete Sscなので以前よりもSscの診断がしやすくなっていることに注意.一般的にSsc-IPの予後はよいとされるが,この新しい診断基準でSsc-IPとされるものも果たして予後がよいのか確認していくことが必要.Ssc-IPにはステロイド+エンドキサンかもしれないが,線維化が主体であるので,PFDでもよいと思うとの意見もあった

10) 均一のGGOではなく,中に粒状陰影やreticular abnormalityがあれば,病理で線維化があることがわかっているEmphysimaがないところで,GGOにreticularがあれば,なるべくinconsistentのGGOととらずpossible UIPととる流れである

11) CPFEに対するNAC吸入の効果の検討.COPDにNAC内服してFVC+70%/1年ではあるが,有意差なく,CPFEのうちfibrosisに効いたものと考えているとのこと.

12) PFDは副作用が問題.食欲不振といった消化器症状(60%),光線過敏症(12%)PFD 30mg/kgと減量しても,full doseではないが有効性は変わらなかった.重症患者だから副作用が強いというわけではない.

13) 一方でPFDの市販調査では使用されているIPFでは,重症度V,Wが2/3を占めているそのうち1/4が脱落するという事実がある.Baseline %FVCが55%未満でも,1年後ΔFVCは改善しており,長期効果が期待できるかもしれないとの発表であったが,IPFだと%FVC<55%では平均生存期間は9ヶ月なので長期投与は難しいとの意見.NSIPの診断はSLBあってのものなので,CTでNSIPパターンだとしてもSLBが行われていないものは,unclassfiableとすべき,用語の問題は大切という意見あり.

<PM・DMに合併した間質性肺炎の話題>

・①予後因子は?,②免疫抑制剤の併用は必須?,③使うならどれがよい?(タクロリムスが使えるようになったが,シクロスポリンとどちらがよい?),④いつまで使う?,⑤CADM-IPには最初から強力な治療が必要?,⑥抗MDA-5抗体(本年中に保険適応になる)陽性間質性肺炎にはtriple therapyが必須?,⑦他に有効なのは?⇒いずれも質の高いevidenceはなく,はっきりわかっていない.今回はわかっていること,自験例での経験を明らかにし,問題提起をしたい.

①予後因子について:

  • DM-IPの方が予後不良.PM>DM>CADMの順で予後が悪い.
  • 同じ基礎疾患でもIPの発症様式によって予後が異なるCADM-IPでも慢性型は予後はよく,急性型は予後不良.慢性>急性〜亜急性.
  • これらのうちどちらが予後に関与しているのか?→自験例で多変量解析をしてみると,高齢,CADM,急性・亜急性,%VC低下,が予後因子として独立していたことがわかった.
  • 抗MDA-5抗体陽性は極めて予後が悪い.血清フェリチン500以上は予後が悪い(500未満では死亡例いなかった).
  • 抗MDA-5抗体陽性IPにおいては,フェリチン1600以上は全例死亡していたが,1600未満は全例生存していた.単変量解析では,発熱38℃以上,フェリチン500以上,抗MDA-5抗体陽性,が独立していたが,多変量解析では抗MDA-5抗体陽性のみが残った.一方,抗MDA-5抗体陽性の患者のみで検討すると,フェリチンが予後不良因子であった
  • 抗ARS抗体が陽性(PM・DM-IPの48%)だと有意に予後がよい.抗ARS抗体陽性はHR 0.34であった.
  • 抗Jo-1抗体陽性は,抗PL 7/12抗体陽性より予後が良い.抗Jo-1抗体陽性 vs 抗Jo-1抗体陰性では陽性群が予後良いことが過去の研究でわかっていて,これらのデータは抗Jo-1抗体陽性は予後が良い可能性を示唆している.
  • 自験例での検討:IP合併PM・DM,CADMの合計58例の後ろ向き検討.
  • 抗ARS抗体陽性41%抗MDA-5抗体陽性28%いずれも陰性30%
     急性が多い.慢性が多い.
      女性少ない.
     フェリチン上昇.PMが30 %を占める.
     KL-6はいずれの群間で有意差ないが,SP-Dは抗MDA-5陽性IPで有意に低く,乖離がある(抗SP-D抗体が関与している可能性). 
    呼吸不全死亡0%.30%.17%.
  • 単変量解析ではあるが,HRを求めてみると,ARS陽性はHR0.31,MDA-5陽性はHR1.76,その他,急性経過,発熱,フェリチン150以上などがHR高い.
  • まとめると,高齢低肺機能CADM急性発症抗MDA-5抗体陽性フェリチン上昇が予後不良因子であり,抗ARS抗体陽性(とくに抗Jo-1抗体陽性)が予後良好因子である.

②免疫抑制剤は何がよいのか?:

  • シクロスポリンvsタクロリムス(FK506).タクロリムスは昨年PM・DMに認可.この根拠になっているのがPM・DM-IP25例で投与52週後の全生存率が88%であり,タクロリムスはPM・DMの予後を改善するという報告.
  • 症例報告レベルではあるが,シクロスポリン無効例にタクロリムスが有効であった報告がある.
  • PM・DM-IP53例のうち,シクロスポリンを含む免疫抑制剤無効の5例に対して,タクロリムス投与を行い,4例は良かったとの報告.
  • ただし,Rheumatology誌に,“タクロリムスの有用性は後ろ向き研究なので,バイアスに注意する必要がある.前向き研究が必要である.”とのコメント.
  • 現時点では,タクロリムスは少なくともシクロスポリンに劣っているということはないことは言える.しかしhead-to-headの比較試験が必要であり,昨年4月より現時点20例の試験が進行中.

③抗MDA-5抗体陽性間質性肺炎にははじめからtriple therapyを行うべきなのか?:

  • J Rheumatol 2005; 32: 1719-26のkamedaらの報告は前向き研究であり,画期的であった.PSL>0.5mg/kg/日+IVCY 10-20mg/kg/3-4wks+CyA 2-4mg/kg/日のtriple therapyを行い,死亡率は50%であり,histrical count 75%より低かった.しかし,感染死あり.
  • Jpn. J Immunol, 36 2013の報告でもtriple therapyはステロイド+免疫抑制剤より良いとの報告がある.
  • しかし,抗ARS抗体陰性,抗MDA-5抗体陽性(ちなみに抗MDA-5抗体陽性間質性肺炎は肺末梢の斑状の浸潤影を呈することが多い)の間質性肺炎で,ステロイド+タクロリムスのみで良くなった経験があり,全例がtriple therapyが必要なのかはっきりしていないと考えている.
  • 自験例でも,MDA-5陽性はたしかに予後不良であるが,生存曲線でもはじめにストンと落ちるが,その後7例は生存している.
  • 間質性肺炎の発症が急性型は全例死亡生存例の30%は慢性型であったMDA-5抗体価は関係がない.高齢,P/F ratio低い,FVC低い,フェリチン高い,などはリスクである.
  • 死亡5例はいずれもtriple therapy(1例は初期より.4例は1-3週遅れて行った).一方,生存した11例はいずれもtriple therapyは行っていなかった.
  • 抗MDA-5抗体陽性間質性肺炎にはじめから全例triple therapyを行うべきかは疑問である.予後改善する可能性はあるが,感染症のリスクも考慮すると,すべての例に行うべきかはまだわかっていない.ヨーロッパのMDA-5陽性例は間質性肺炎を合併せず,おとなしい例がある.
  • 私見では,急性発症,フェリチン上昇,呼吸不全などがあれば,triple therapy.抗MDA-5抗体の結果はすぐにはわからないので,臨床症状で判断するしかない.
  • 治療効果が認められない例では,フェリチンは低下しない

<IPFの最近の動向>

  • 慢性増悪因子:①労作時desaturation(PaO2<70torr:予後2年未満),②JRS stage(Vだと予後2年未満),③VC(%VC<60%:予後2年未満),④DLCO(%DLCO<60%,特に<40%では予後2年未満).
  • 継時的にみて,FVC(6ヶ月〜1年)で10%以上低下DLCO(6ヶ月〜1年)で15%以上低下,画像悪化などが予後不良.
  • weak yes:リハビリテーション,weak no:steroid+AZ+NAC,NAC,PFD.
  • 次期ガイドラインは以下の研究を踏まえて,ATS2014サンディエゴにて発表された.
  • ASCEND(PFD),PANTHER(NAC monotherapyは無効(3剤併用は死亡率増加.NAC経口も無効(進行例だったから??)),INPULSIS 1・2(Nintedanib).
  • NACに関しては,本邦では吸入療法.早期のIPF(stageT,U,%FVC 90%,%DLCO 65-70%)でFVCΔ150cc↓のところFVCΔ90cc↓に抑えた.しかしoverall survival有意差なし.よってFVC低下を抑えた結果からNAC吸入は無効という訳ではない
  • Respirology誌にNAC+PFDはFVC低下を有意に抑制したと報告した.
  • 慢性進行例にNAC,PFD,Nintedanib⇒それでもFVC 5-10%/6 months低下する例⇒NAC+PFD,NAC+Nintedanib,
    PFD+Nintedanib,NAC+PFD+Nintedanib?,課題である.
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