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第98回 間質性肺疾患研究会(2018年10月19日)

「抗GM-CSF自己抗体陰性の肺胞蛋白症」

<セッション1>「MDSに関連したPAP」

1)SPAPとAPAPは画像が異なることが少なくない.粒状陰影や小葉間隔壁肥厚のみのことも
この例はCTで小葉間隔壁肥厚のみで,GGOは目立たない.BALFも陰性でVATSが必要になった.病理では小葉間間質周囲の気腔にPAS染色陽性,surfactant protein A陽性構造物あり,この周囲の線維化もあり.PAPのドレナージが終わった経過の画像ではないか,もしかするともっとGGOが目立っていた経過があったのではないか.しかし,cellular NSIP,LIP,HPでもこのような変化がでるので...どこからPAPとする?.すべてのPAPの最終像はこうなるのか?.

2)はじめの画像は粒状陰影.BALFでも米のとぎ汁様所見なし.はじめの病理で腔内器質化がありOPとされていた.ステロイドなど使用し,画像悪化し,その後のBALFでようやく米のとぎ汁様,TBLBでもPAS陽性物質あり,ようやくPAPと診断された.病理はHE x40,x60を示し,0.2μmの好酸性物質の集合体があるかどうかを示すのがPAPの根拠になり大切MDSに伴うPAPは,MDSを治療し良くしないと,PAPそのものも良くならない

3)MDS合併SPAPは皮疹がでることがある.PAPは最終的に線維化することがあるとされているが,PAPが副次的にあって,CHPにAPAPが合併してきた症例の経験がある.また小葉隔壁肥厚があって,エルドハイムチェスター病と思っていたらPAPだった症例も経験がある.⇒なぜ小葉間隔壁が肥厚してくるのか??.

<レクチャー>「MDS合併したSPAP」

  • 先天性PAP,secondary PAP(SPAP),APAP,分類不能PAPの4つに分類ただし,SPAPでも抗GM-CSF抗体陽性になるものがある
  • 1991〜レジストリされた1331例のうち,1240例はAPAPで,残り91例のうち81例は基礎疾患があり,基礎疾患のない9例は遺伝性PAPだった.
  • 1999年以降のSPAPの海外報告は45例しかない(もちろん抗体は測定されていない).SPAPはアジア,アメリカからの報告が多い.SPAPは中高年の男性に目立つが性差はない.そして,SPAP全体の88%は血液疾患が背景にあり,うち64%はMDSであるMDS-SPAPは予後不良である
  • 1999年以降はCML-SPAPは減少し,MDS-SPAPが増加している.CMLが治療できるようになったことも影響しているかもしれない.
  • メカニズム:

    肺サーファクタントはII型肺胞上皮細胞において産生され,ふたたび上皮細胞にとりこまれて分解および再利用されるとともに,GM-CSFシグナルに依存して肺胞マクロファージにより処理されることでその産生と分解のバランスが保たれ,恒常性が維持されている.
    遺伝性肺胞蛋白症の患者の肺では,GM-CSF受容体に異常があるため,肺胞マクロファージは肺サーファクタントを取り込んでも処理できず泡沫細胞となり,気腔には処理されない肺サーファクタントが蓄積し呼吸障害を生じる.遺伝性肺胞蛋白症およびGM-CSF受容体β鎖のノックアウトマウスの肺においてGM-CSF値は上昇する.
    (Nature 2014; 514: 450-4)

    (J Immunol 2005; 174: 2712-9)
  • APAPは5年生存率は100%だが,SPAPは2年生存率は41%と予後が良くない.現在の手元にあるSPAP76例ではMST:17ヶ月と予後不良である
  • SPAP診断後の生存期間は全肺洗浄の有無では変わらない.現状はそうするしかないのだが,はじめの1〜2週間はよいが,その後感染の合併や洗浄後の呼吸不全などで経過が良くない.
  • MDS-SPAPは移植治療の導入が必要で,血液内科との連携が不可欠であるが,呼吸状態が悪いとなかなか移植導入まで進まないことが多い.移植例は8例しかいないが,MST:24ヶ月で2年生存率46.9%(一方,非移植例46例はMST:13ヶ月で2年生存率は26.1%).移植して60日くらい経ってくるとPAPは急に改善してくる(肺胞マクロファージが入れ替わるから?).
  • MDS骨髄の状況は,移植が必要ないとされる“不応性貧血”の状態でもPAPは悪くなる(⇒呼吸不全+感染).
  • SPAP診断時にステロイド使用例は予後不良である(HR 3.2: 95%CI 1.09-9.31).むやみやたらにステロイドを投与しないことが大切
  • SPAP診断時の拡散能障害は予後不良である(HR 9.98: 95%CI 1.02-96.11).特に%DLCO <44%は予後不良
  • 以上より,MDSの移植治療が導入できる呼吸状態,全身状態でPAPを早期発見することが重要である⇒画像診断が大切!
  • APAPと異なる非典型的なPAP画像が多い.例えば,HP様小葉間隔壁肥厚粒状陰影など.SPAPはcrazy paving・胸膜直下スペアの画像は少ない
  • MDSは器質化肺炎を合併しやすい.PAP+OPあるいはOPが先行したPAP.OP+MDS+PAPの予後は不良である(MST:11ヶ月,1年生存率22%)⇒先行したステロイド治療の影響かもしれない.
  • 細胞型の異常:
    肺胞マクロファージの細胞形態異常・異型分化:MDS-SPAPの肺胞マクロファージはN/C比が高い細胞が増加する.
    核型異常をもつ肺胞マクロファージが増加する
    特徴的な染色体異常パターンあり:MDS-SPAPではanomalyが多く,IPSS risk群が多い.MDSは5番染色体異常(16%),7番染色体異常(11%),8番染色体異常(9%)が多いといわれる.一方,MDS-SPAPは1番染色体異常(33%),8番染色体異常(30%)と異なる.トリソミー8を示す症例が圧倒的に多い
  • 最近リウマチにオルミエント(バリシチニブ)というJAK1/2阻害薬があり,副作用として間質性肺炎が知られている.しかし急速進行性間質性肺炎ではない.PAPなのかも?.

<セッション2>「膠原病に関連したPAP」

4)Ssc治療下に発症したMDS合併SPAPの症例.膠原病の1.4-1.7%にAPAP合併が知られる.MDS-PAPにトリソミー8が関連していることが知られる(日本は半数がトリソミー8異常)リツキサンはAPAPに使われることもある.一方でSPAPにはリツキサンは使用されない.

5)スティル病に伴ったSPAPの症例.PH,PVODを合併した.病理はplexiformなく,静脈にも変化があることから,Sscに伴うPHの特徴だと考えられる.スティル病はマクロファージに関連した疾患だと思うが(マクロファージが活性化する⇒むしろPAPの逆だが...),PAPと何らかの関連が??.

6)関節リウマチ,珪肺症に関連したPAPの症例.急性珪肺症に伴うPAPは知られているが,一方で大結節を伴う慢性珪肺症のPAPの報告もある.粉塵関連のPAPの多くは抗体測定が可能になる以前のものであり,測定可能後の報告の粉塵関連のすべてのPAPは抗GM-CSF抗体が陽性である

7)PAP先行し,MDSが後から診断される例も2割くらいある.この例はPAPとMDSの関連はなさそう.核型異常がないMDSで,抗体陰性,STAT5異常もなしなので,分類不能PAP.抗GM-CSF抗体とSTAT5リン酸化の測定は新潟大学に依頼した.

<レクチャー>「抗GM-CSF抗体陰性の膠原病合併PAP」

  • CADM合併例,ベーチェット病/MDS合併例,リウマチ合併例(これはPAP軽症)を経験した.
  • ベーチェット病はシルクロードに沿って発症多いので“silk road disease”と言われている.
  • レジストリではベーチェット病合併PAPは5例.平均44歳,4/5例が女性,BALで診断できず,2/5例はVATSで診断,トリソミー8を伴うMDSを4/5例に合併腸管病変は3/5例であった.crazy pavingは1例のみで,非典型的な画像が多かった.全例ベーチェット病が先行しており,3/5例は敗血症で死亡,2/5例はMDSハイリスク群であった.
  • MDS合併ベーチェット病は64例の報告があり,注目すべき点は,トリソミー8と腸管ベーチェットが多い点である
  • SPAPの7%に膠原病を合併する報告あり.多くのケースにPAP診断時に免疫抑制治療が行われており,免疫抑制治療をある程度弱めることによってPAPがコントロールできる例がある
  • ベーチェット病とスティル病は膠原病類縁疾患である.CADMはサイトカインストームである.Trueの膠原病ではPAPは起こりにくいと思っていると膠原病のDrから指摘あり.
  • 画像に関してはSPAPはcrazy pavingが多くない小葉間隔壁肥厚のみのものや,HPのような陰影のものも.これらをどう診断していくか.
  • IPAFはANCAやPAPの事は含まれていないが,これは課題ではないか?.

<セッション3>

<レクチャー>「自己免疫性PAPの概要と合併症」

  • 肺サーファクタントの生成分解過程の障害であり,抗GM-CSF抗体によってGM-CSF作用が低下し,肺胞マクロファージ機能低下をきたす疾患
  • BALFリンパ球が50%前後と増加することが見逃されがち.
  • APAPの合併症:
①感染症:
  • APAPの5-7%.ノカルジア症(APAPの4.6%),NTM症(BALF培養で8/19例で陽性),GM-CSF吸入でAPAPは改善したのちに結核性リンパ節炎をきたした例(マクロファージ機能の改善とともにリンパ腫大)などの報告あり.
  • 感染症治療によってAPAPが改善しうる報告が多数あり
②自己免疫性疾患:
  • APAP33例の解析で,線維化があると予後が悪いとの報告(Akira M et al. AJR 2016; 207: 544)
  • なぜ線維化するのか?.動物実験レベルではあるが,GM-CSFはブレオマイシンによる肺の線維化を抑制するという報告がある(抗GM-CSF抗体が線維化を促進してしまう可能性).
  • 血管炎,サルコイドーシス(サ症先行,APAP先行),HP,APAP+MDSというのもある(ややこしい).

  • APAPの5年生存率は74.7%,10年生存率は68.3%と悪くはないが,感染症の併発やAPAP自体の進行による呼吸不全で死亡しうる.
  • 抗GM-CSF抗体濃度とPAP症状の程度の相関はないとされる
  • 抗GM-CSF抗体陽性はessentialなのか,それともsecondaryなのか?.抗GM-CSF抗体陽性は何らかの粉塵吸入の人に多い印象がある.
  • ITO(インジウム錫酸化物)は液晶パネルやプラズマディスプレイの原料であるが,それによるインジウム肺でPAPの報告は日本にはない.陽性例はNIHの2例だけであるが,たまたまであると思っている.粉塵曝露によるPAPはすべてAPAPではないかと思っているたとえば,3.11東日本大震災でAPAP患者が増加している

<セッション4>「遺伝子異常に関連したPAP」

8)成人発症型PAPとGM-CSF受容体α鎖変異の例.抗GM-CSF抗体陰性PAPで,血清GM-CSFが高値である場合,GM-CSF受容体異常を疑う血清GM-CSF測定はスクリーニングになる

9)高齢発症のCSF2RA遺伝子変異による遺伝性PAPの例.

10)家族歴のないGM-CSF受容体α鎖遺伝子欠失による成人発症型PAPの例.全身性にα鎖欠失しているはずなのに,臓器病変は肺のみ.肺胞マクロファージの分化にのみ関与している??.

11)GM-CSF受容体β鎖遺伝子異常は小児に多く,成人では初めての報告.肺移植,ドナーは夫と弟.移植後6ヶ月でドナーからの両肺はレシピエントタイプになってしまった.

12)抗GM-CSF抗体は陰性.遺伝子解析では,変異として多いCSF2RAおよびCSF2RBに異常を認めず,GATA2遺伝子にミスセンス変異を認めた.GATA2遺伝子はマクロファージ分化を安定させる遺伝子.

<レクチャー>「遺伝性PAP」

  • 抗GM-CSF抗体陰性⇒血清GM-CSF低値ならば“分類不能PAP”.
    血清GM-CSF高値⇒GM-CSF受容体機能解析(CSF2RA遺伝子,CSF2RB遺伝子のシークエンス)を行う
  • GM-CSF受容体にはGM-CSFに結合するα鎖,β鎖がある.CSF2RA遺伝子はα鎖,CSF2RB遺伝子はβ鎖をコードする.
  • CSF2RA遺伝子は,性染色体の“偽常染色体領域(pseudoautosomal region: PAR)”にあるX,Yにのっているのに,X⇔Yで組み換えがおこる.父親のYにのっていても娘に遺伝しうる.常染色体劣性遺伝の形式で遺伝する(同胞はあるが,その上の世代にない).血族結婚していることが重要.
  • GM-CSF受容体変異にともなうPAP(血族結婚)は,日本では,高齢発症,女性に多い.

<セッション5>「その他のPAP」

13)先天性赤芽球癆で7歳で母をドナーとして同種骨髄移植,その後BO併発,ステロイドなど治療,KL-6はどんどん上昇していった.10+X歳で母から生体肺移植を受けた.右肺を移植(摘出肺でPAPが判明)したら,どんどん残存左肺も改善していった.KL-6も1万台だったがどんどん低下.移植した右肺がどんどん動き,左肺のリンパ管も作動し,クリアランスができたと考えているリンパ管がある間質が線維化してしまうとクリアランスが低下するので,線維化したPAPは予後が良くないと考えている

14)VATSでfNSIP with DIPと診断され,免疫抑制療法を行われたが,増悪し,脳死左肺移植.その後移植肺に広範なGGOが出現.肺移植後のSPAP.PAP所見は移植肺に強い(リンパ管までつなげないので...).海外では腎臓,心臓移植後のPAPの報告がある.β鎖異常の遺伝性PAPはNSIPと間違えられるので遺伝子異常があったのでは?という意見あり(β鎖異常は,α鎖異常と違って線維化が強いらしい).またはじめからPAPがあったのでは?,はじめのVATS標本を見直すべき,との意見もあり.薬剤よるものは?という質問あり→シロリムスによるPAPの報告があり,マクロファージに影響しうる薬剤ならありうるとの意見もあったが,膠原病Drは“薬ではありえない”とのこと.※もっともはじめにでてきたJAK1/2抑制のオルミエントならありうるのかもしれないが??.

15)東日本大震災3週間後にGGOが出現,近医でNSIPと診断され,ステロイド治療を受けていた.血清では高値でなかったが,BALF中のGM-CSFが高値であり,GM-CSFシグナル解析をすると末梢血STAT5リン酸化障害があった.血清にSTAT5を阻害する何かがあるとのことで,血清抗GM-CSF抗体を再検査したら,少しずつlow titerではあるが,上昇してきた.抗GM-CSF抗体がSTAT5を阻害していることがわかった.ステロイドパルス療法は抗GM-CSF抗体を低下させることがある.しかし,もともと何かしらの阻害要素があって,震災による粉塵吸入が加わってマクロファージ機能不全が追加されたのかも??.

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