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スタッフ

第20回日本認知症ケア学会に参加して

2019年5月25日〜26日 国立京都国際会館にて

●大会長講演「聴くだけでなく、察するだけでなく」
      東京慈恵会医科大学精神医学講座  繁田雅弘教授

日頃の診療で感じていること

認知症を心配して受診するが、検査を受けて認知症の可能性があると診断ざれると、診断がついたことを受け止められず、できることをやめてしまう人。しかし、その瞬間に機能を失うわけではない。⇒「認知症の呪いにかかったよう」な状態をいかに元の生活に戻すか。

認知症の診断を受け家事をしなくなった人。「自信がない」とやらない、家族はできないと思っている。まだできるのに、失敗を心配してやらなくなっている。

不安になると、まだ挑戦したこともないことをやってしまう。できると自信がつくが、できないと自信がなくなる。⇒今までやっていたことを行うのでよい。

診断後に脳トレをやり始める人がいるが、脳トレをやってもアミロイドは溜まっていく。⇒やってもできない、楽しくないなら不要。

マスコミにより、認知症は怖い病気のようになり、おどされて受診するような体制になっている。「認知症」は特別な響きがあり、先入観、偏見がある。

患者は病院に来る前に、受診しようか迷っている。病識がなく、家族が受診させる人もいるが、長谷川式テスト等でそんな問題が出されるのかとショックを受け、それが答えられずにまたショックを受ける

発想を変えて、元の生活ができることを信じて、何かの自信を持たせる。自尊感情(自分らしく生きる)、自己効力感(この位の事はできる、達成感)を高める。テストの点数、萎縮を伝えるより、生活のなかの困難が減っていくことを期待していると伝える。

盗られ妄想で、家族を疑うとき、傾聴しても共感してはいけない事もある。「疑いたくないけれどほかに考えられなかったから疑ったのですね。あなたは疑うような人ではない」と言う事が自尊感情を上げる。

自動車運転免許の返納を家族から相談されるが、「能力がなくなったから運転はダメ」ではなく、「年を重ねれば誰でも反応が遅くなるし、どこかで止めるとしたら、このタイミングでは」とできるだけ自分で判断・納得させるようにしている。
自ら○○したかったと気付く事のサポートができると良い。

●大切な作業と生活を支えるケア
      首都大学東京人間健康科学研究科  小林法一教授

作業学科に所属し、人の日常生活を調査(日記を見せてもらう、何をしているか聞き取る、行動を共にする等)している。

ケアをする側は、業務の一環、本人にとっては仕事だったり、余暇だったり。300人以上調査して、スタッフと本人の思いの一致は25%。作業をやりたいと思ってやっている人は50%。

日常生活は、作業の連続で構成されている。作業の本人にとっての意味は、ケアする側の予測とは必ずしも一致しない。

作業の意味には、義務、願望、価値、楽しみがあり、人はこれらを入れ替えながらより満足できる生活を作り続けている。

作業を入れ替え成功した事例   90歳女性  入所中

他人とのかかわりを拒み、いつも作業が始まると靴で窓をたたく。スタッフが止めると暴力。車椅子を下りて徘徊する。
その人の生活をよく観察し、語りの中から、本人の重要なことを聞き出し(カードを見せて選んでもらう)以前の生活、出口を探していた事等、問題行動と繋がった。農作業、花を育てる、水やりに作業を入れ替えたところ、落ち着き笑顔で行えている。

●これからを生きる希望  三鷹市の初期支援チームの取り組み
      のぞみメモリークリニック     水谷佳子氏

認知症と診断され、本人が相談するところがないと立ち上げられた。認知症専門クリニックのスタッフがチームの一員となり、診断直後の人の「介護保険外の暮らしの支援」を行っている。

本人の許可を得てレコーダーで録音し、文字におこしてチーム間で共有する。

事例紹介

・ミナミさん77歳   アルツハイマー型認知症と診断された夫と二人暮らし

1〜2回/月の面談のほか、認知症の人同士の話し合いにも参加してきた。「○○しなかったから認知症になったのではないか」という発言がとてもおおかったが、ある日話題の映画について目を輝かせて話す。

・ユミ子さん89歳   きれいに整理、掃除されている自宅で面談

「主人が入院退院を繰り返していて、今までのペースじゃいられない、この年になって環境が変わるのはつらいし、大変。それで調子を崩した。長いことダンスをやっていたが、覚えが悪くてやめた。仲間が外に誘ってくれるが、気力的に自信がない。」と診断については触れず。
クリニックでは、「何かあると、何でもかんでも私が間違えている、忘れてる、と言われる。主人や息子が私を認知症扱いするのが納得いかない」

その後デイサービスに通ったが、「時間に間に合うように支度ができない、他の仕事が残ってしまう。向こうで絵手紙などするが、好きじゃない。そんな時間を過ごすなら、自分の本当に好きなことをやりたい」と、デイサービスをやめる決心をする。
後日、笑顔で「ダンスサークルに行ってきた」と話される。

・サキ子さん58歳   診断された日にクリニックで面談。

「やっぱりそうだと思った」とのことで、支援の話をして終わった。2回目の面談時、「この前帰ってから、落ち込んだ。私も支援される人になっちゃったんだ、って」と、衝撃的な発言。面談を続けたが、多くを語らず。ある日、世間話のついでに、「60歳まであと少し。自分の小遣いくらい仕事をして欲しいな」と話し出す。

診断直後は、「認知症」にまつわるあれこれで余裕もなく、したいことなど考えられない人が多い。対話や関わり合い、時間の流れが考え方のすき間を作る手助けになるのかもしれない。

認知症を生き抜くためのパートナーとして活動を考えている。

●健康寿命を延ばす口腔の支援
      明海大学歯学部機能保存回復学講座摂食嚥下リハビリテーション学
                            大岡貴史教授

平成28年高齢者の残存歯が20本ある人は80歳で45%。8020運動の成果で総入れ歯の人は減っている。

★認知症の発生リスク
残存歯20本以上1.0 口腔衛生心がけ無し1.76倍
残存歯ほぼ無し・義歯無し1.85倍 あまり噛めない人1.25倍
残存歯ほぼ無し・義歯あり1.09倍   

・症例:80歳男性、アルツハイマー型認知症初期、ADLほぼ自立、残存歯26本。1回/3か月の通院。毎回歯ブラシを購入して帰り、口腔の関心は高かった。ある時食物残渣が多くなり、持参した歯ブラシは開ききっており、家族に確認すると、認知症が進行していた。

・問題のトリガー

・自発的な清掃行動の低下・口腔への関心の低下
・手指の構築性の低下・認知障害、訴えの困難さ

★認知症と歯科疾患
専門的な口腔清掃2.5倍 齲歯治療5.5倍
歯周病治療15.9倍   

治療が繰り返される人は数年単位でみると、認知症が進行していた。

★転倒による損傷

・症例:80歳女性、レビー小体型認知症、ADL歩行以外ほぼ全介助、就寝後独語が多い。
幻覚のためか立ち上がり転倒し、救急搬送されて来た。
下の歯で上口唇を噛んでしまい、歯も折れていたが、痛みの自覚なく、「誰かにやられた」と言う。口腔内を見るのも困難、治療はもっと困難だった。

★歯・義歯と転倒

65歳以上1年間転倒しなった人の3年後の転倒の有無を調査(約1760人)

残存歯20本  1として 
残存歯19本以下、義歯使用1.36倍
残存歯19本以下、義歯無し2.5倍
★歯・義歯と認知症の発症

歯科受診がほとんどなく、義歯未使用のリスクは1.9倍

歯が1〜2本なくなったら、食べるのに支障がなくても義歯を作成して、早くから慣れたほうが良い。誰でも違和感があるので、意思の疎通が図れないと調整が難しい。手入れも必要。

認知症になってから義歯を作成するのはかなり困難。

★認知症とインプラント

インプラントは、咬合力を高める、咀嚼力が改善するが、歯周疾患には罹患する。

作成時は、認知症の有無を十分に把握。発症後や軽度認知障害状態、認知症発症リスクが高いなら、インプラント治療は推奨しない。

★口腔支援の意義

多職種の共通認識

食事・健康・リスク管理・呼吸器疾患の予防・歯科疾患の予防治療・栄養、運動への関与

★人生最終章の食事

特養入居中に死亡した38名の調査(事故や明らかな原因疾患がある人は除く)

要介護4.5  年齢77.3±7.6歳

離床困難19.8日前食事摂取困難(半分以下)16.4日前
吸引11.4日前〜水分摂取困難1.9日前
★口腔内の評価・良い状態

唾液で湿潤している

口腔アセスメント(OHAT)や、多職種連携シートを利用し困ったときは多職種と連携を。


発表後の質問

@宿泊の施設を持っているかわからないが、以前オーストラリアに行ったときに、朝はコーヒーの香りが良い等、においで生活のリズムを作るとの話を聞いたことがある。アドバイスしていることはないか?

⇒外来診療だけで施設はない
アロマが落ち着くと言われるので、認知症外来では取り入れている。
興味を持った家族には、アロマを勧めている。

A匂いがわからずトラブルが起こっている相談はあったか?
それに対してどんなアドバイスを行ったか?

⇒実際に困っているという生活トラブルはなかった。
家族に気をつけるよう伝えている。

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